享楽

ロスト・イン・マンハッタンの享楽のレビュー・感想・評価

3.5
「ロスト・イン・マンハッタン 人生をもう一度」
ホームレスの生活を半ドキュメンタリー的に描いたこの一作。映画的フィクションなど一切なく、リアリティーを追求した結果このような一作が生まれるのだろう。

まず始まりが中々面白い。清掃業者のような男達があるアパートの一室に入る。中はボロボロで家具は散乱、天井は部分的に崩れ落ちていて、それらを清掃しようとする。
ある1人の清掃員の男が浴室に入ると、バスの湯溜めの中から1人の少々小汚いおじさまが現れる。主人公ジョージ(リチャード・ギア)は元妻に逃げられてしまったが、彼女に戻ってくると自分は言われたからひたすらここで待っていると主張するが、清掃員の男に追いやられホームレスと化すところから始まる。
ジョージの幾つかの謎を孕んだままストーリーは淡々と進行。レビューで多くの方々が「淡々と〜」と仰られているが、本当にその通りで、感動的な ドラマティックな展開や表現などほとんど皆無で、彼のホームレス生活の様子(物乞いやホームレス施設での生活 周りの同じホームレスの人々の生態や最低限の生活保障でなんとか生き延びてるオジさん達の態度や主張)などがリアルに映る。
ジョージはこれからどうするのか、彼は何故元妻や娘に置き去りにされたのか、ホームレス連合の従業員に「精神疾患や依存症のチェックをします」と訊かれたとき、質問に応えるのを煩うのか、劇中で元妻や娘に会いに行くが、その時彼は何を考えているのかなどを察そうとしながら観れば、リチャード・ギアの表情演技による情緒具合やその変動変化が豊かなことがあり、今作は楽しめるだろう。
ジョージが街中で乞食をしている中、誰もが彼を無視。暖を取ろうとして病院の受付前に転がり込むも仕方なく追い出される。ホームレス施設の職員などホームレスを擁護する立場の人達の、それは偽善的といえるがどうしようもない対応などもリアル。ホームレスの当人達は、申し上げにくいが少々傲慢で、あまり社会に適合しようとしない態度の描写も多く、それもまたリアルなのかと感じた。