こたつむり

ボス・ベイビーのこたつむりのレビュー・感想・評価

ボス・ベイビー(2017年製作の映画)
3.9
★ 想像の海で泳ぐ少年の成長物語

息子にせがまれて鑑賞しました。
なるほど。子供向けとしては完成度が高い作品。「クラスで流行っている」という息子の言葉も、あながちウソではないかも(子供の表現は大袈裟ですからね)なんて思う仕上がりでした。

部屋いっぱいのおもちゃ。
庭に備え付けられた秘密基地。
「目覚めよ、勇者たち」と声を出す目覚まし時計。子供から見たら“ワクワクできること”がたくさん詰まっていて、それだけでも子供は大喜びだと思いますが、その先に描かれるのは両親の愛情。抵抗なく子供に伝わる表現が巧みです。

また、子供は刺激が足りないと飽きますからね。アーティスティックな切り絵風の絵柄を混ぜて緩急を付けていましたが、この絵柄の変更も「子供の頃は想像力の世界で生きている…」と物語に取り込むことによって、違和感なく場面が繋がっているのです。

何よりも見事なのが、製作者側の視点が子供の高さだということ。だから「感動させるのではなく楽しませる」という決意が滲み出ているのですね。確かにピクサーと違う路線を歩むのは賢明な選択。

だからね。
映画を観終えた後に「あの目覚まし時計が欲しい」とか「スーパーウルトラビッグ…なんだっけ?」とか「僕にも歌を歌え」とか会話が弾むのですよ。これは親として一番嬉しい話。子供向け映画としては最高級の仕上がりと言えるでしょう。

まあ、そんなわけで。
芸術性と娯楽性を両立させた子供向け映画。
大人が観るときは視点を低くすることがコツだと思います。また、色々なところにオマージュが仕込まれていますので…それは大人向けのサービスだと思って享受しましょう(分かりやすいところで言えば『メリー・ポピンズ』とか)。

あ。でも、ひとつだけ難を言わせてください。

スタッフロールが長すぎです。
大人の事情で色々とあるのは分かりますけどね。スタッフロールの後に“おまけ映像”を仕込むのならば、三分以内に収めるとか、飽きない映像を仕込むとか…最後まで子供視線を貫いてほしかったです。
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