MasaichiYaguchi

ブリッジ・オブ・スパイのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)
4.0
本作は米ソ冷戦時代に実際にあった歴史秘話をスティーヴン・スピルバーグ監督とトム・ハンクスのコンビで骨太な人間ドラマとして描く。
本作で題材となっているのは「スパイ交換」。
今年はスパイ物が何作品も公開されて話題となったが、本作ではこの手の映画で描かれるスパイの華麗さや格好良さではなく、その存在の孤立無援の過酷さが浮き彫りにされる。
冷戦下、2大国夫々の命令で諜報活動している最中に身柄を拘束されたソ連のスパイ、ルドルフ・アベルと、アメリカのU-2パイロットでスパイのフランシス・ゲーリー・パワーズは歳も性格も違うけれど、最後までスパイとして職務を全うしようとする。
そして本作の主人公、保険専門の弁護士であるジェームズ・ドノバンは、敵国スパイの弁護と捕虜交換交渉という全く畑違いの仕事に挑んでいく。
弁護士として優秀ではあるが、夫として、父として普通の市民生活を送っているドノバンは、失敗すれば戦争が勃発しかねないという重い責務を負う羽目になる。
冷戦下で敵国スパイを擁護することで世間から冷たい目を向けられ、自分も家族も危険に晒しながら、この“普通の男”は“不屈の男”となって不可能と思われることに粘り強く取り組んでいく。
マーク・ライランスが演じるソ連のスパイ、ルドルフ・アベルの何処か達観したような飄々さ、そして祖国や芸術を愛する気持ち、職務に忠実であろうととする姿にドノバンだけでなく私も共感を覚えた。
そして敵国同士ながら、お互い職務を全うしようとする2人は心を通じ合わせ、不思議な絆を結んでいく。
スパイ交換交渉が行われたドイツでは“不測の事態”も発生し、事態打開向けて予断を許さないハラハラした展開が最後まで続く。
この作品を観ると、歴史を動かすのはずば抜けた能力を持つ英雄だけではなく、ドノバンのような信念と不屈の闘志を持った普通の人なのかもしれないと思えてきます。