SatoshiFujiwara

ブリッジ・オブ・スパイのSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)
3.8
冒頭、ソ連のスパイであるアベルが自画像を描くシーンでは、鏡に写ったアベル、アベル本人、書かれた自画像のアベルといわば「分裂したアベル」がいきなり提示されるが、これは複数のアイデンティティに引き裂かれるスパイの様相を視覚的にあらわす。本作ではト厶・ハンクス演じるドノヴァンのシーンでもしばしば鏡が登場するが、これはアメリカ、ソ連、東ドイツと複数の国家間の政治的コンセンサス調整に引き裂かれるドノヴァンの立場をも意味しているだろう。FBIがアベルを追跡するシーンはちょっと「フレンチ・コネクション」を思い出すような見事さだし、ブルックリンの街並みをナメるシーンは50年代のアメリカB級アクション映画の画面の肌触りのようだ(ザラついて乾いた撮影はヤヌシュ・カミンスキ)。雨の尾行劇、東ベルリンでのすすけた雪景色などなど、視覚的なみどころが実に多数。これはわくわくしますわ。ストーリーやテーマのことは書きません。皆さん書いてますし。