うめ

ブリッジ・オブ・スパイのうめのレビュー・感想・評価

ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)
3.6
 皆様、遅ればせながら明けましておめでとうございます。去年は大変お世話になりましたが、今年もこんな私ですが、是非お付き合いください。その他、去年のお礼、今年の目標等々書こうかと思いましたが、時期外れも甚だしいので割愛。とにかく今年も、相も変わらず長々と、つらつらと映画の感想を書いてまいりますので、よろしくお願いします。

 さて。今年映画館で鑑賞一本目となりました今作。スピルバーグ×トム・ハンクスというお馴染みのコンビに、独特の作風を持つコーエン兄弟が脚本として参加しているということで、公開前から気になっていた作品、観に行ってまいりました。

 保険関係の弁護士をしていたジェームズ・ドノヴァンが、ソ連のスパイ容疑をかけられた男ルドルフ・アベルを弁護したことから話は始まる。敵対するソ連のスパイとあって、裁判を早く終わらせようとする判事、死刑を望む大衆…そんな声に対してドノヴァンは「どんな人間も等しく公平な裁判を受ける権利がある」という原則のもと、アベルの裁判を進めていく。やがて、ドノヴァンはその裁判のみならず、ソ連とアメリカのスパイ交換という、失敗すれば世界が戦争に大きく傾くミッションを引き受けることに…。

 実話でしかもスパイものと聞くと、スピルバーグだし、何となく壮大で重い雰囲気の作品かなぁなんて思っていたのだが、そこは脚本にコーエン兄弟がいるだけあって、とてもライトな仕上がりになっていた。でも、スピルバーグとトム・ハンクスがいなければ、あれだけ内容の濃いものを、これほどの娯楽作にはできなかっただろう。2時間20分ほど観客を飽きさせずに(むしろ時間が早く過ぎたように感じたくらい)観させる映像作りはやっぱりスピルバーグすごいなぁと思わせるし、コーエン兄弟の皮肉たっぷりのジョークも交渉の真剣な会話も、うまいバランスでこなすトム・ハンクスは器用だなぁと思わせる。コーエン兄弟の作品が好きな自分としては、会話の展開やジョークの節々にコーエン兄弟っぽさが感じられて、にやりとしてしまった(笑)スピルバーグ、トム・ハンクス、コーエン兄弟、それぞれの良さがほどよいバランスで表れている作品だ。

 あとは、今年アカデミー賞助演男優賞ノミネートにもなっているマーク・ライランスだろう。予告編を観た時から、彼の表情が気になってはいたが、案の定、トム・ハンクスに比べて出演時間が短いにも拘らず、その存在感を存分に出していた。アカデミー賞にノミネートされるのも納得の存在感。『レ・ミゼラブル』でアン・ハサウェイが見せたようなインパクトがある。素晴らしい演技だった。(ちなみに出演作を存じ上げなかった俳優でしたが、『ブーリン家の姉妹』の姉妹の父親役と聞いて納得しました。あぁ、あの人かと(笑)海外ドラマの「ウルフ・ホール」にも出演されているようで、気になります…)

 冒頭のアベルのシーンや東ドイツの列車のシーン、ベルリンの壁建設のシーンなど、光る演出はあったものの、スピルバーグにしては少し物足りない感じはした。それぞれの出来事をぎゅっと詰め込んだためだろうか、全体に駆け足な印象も受けた。詰まる所、スピルバーグの最高傑作ではないのだ、これは。(もちろん、出来は素晴らしいけれども。)もっと、もっとと思ってしまうのは、私のわがままだろうか(笑)でも、もう一押し、何かが欲しかった。

 ドイツ語やロシア語、英語がちゃんと飛び交っているのは、歴史もの好きとしては嬉しかったし、舞台があちこち飛んでも、それぞれの雰囲気を出そうとしているのも良かった。冷戦期のドイツ、ソ連、アメリカについて、多少知識を入れておくと、より楽しめるかもしれない。(反対に何の知識もなしに観に行くと大変かもしれません。)実在の人物、「不屈の男」ドノヴァンの奮闘を知るには良い機会だろう。


 しかし、どうでもいい話ですが、これをコーエン兄弟が監督したらどうなるのかなぁと(笑)『レディ・キラーズ』でトム・ハンクス出演しているし、ちょっとコメディのドタバタものにしたら面白くなりそうな…って実話だから駄目ですね(笑)そんな想像をしてしまいました。