yukihiro084

ブリッジ・オブ・スパイのyukihiro084のレビュー・感想・評価

ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)
5.0
昔(HERO)の中で、小日向さん演じる
事務次官が、かつて間違った判断をして
しまった元検事に言う。

『人としてどうなんだって話ですよ。』

主人公のジム・ドノヴァンと彼の家族、
そしてもう1人の主人公アベル以外、
法曹界も、CIAも、ソ連も、東ドイツも
どいつもこいつも、みんな芝居がかって
いる。いちいち芝居がかっている。
というか、カッコつけている。

立場がそうさせるのか、メンツがそう
させるのか、単純に考えすぎなのか、
まぁ〜回りくどい。ま〜面倒くさい。
訪ねてこいと言って本人がいない。
スパイ映画じゃないんだから、
メモや地図は記憶して燃やせと言う。
君たちも作戦も存在しないと謎の男が
言う。一般市民も判事も警察も、スパイ
など絞首刑にしろと皆が言う。
主導権がどうので、話が前に進まない。
ま〜回りくどい。ま〜面倒くさい。

それでも、この物語の主人公、ジム・
ドノヴァンはどこまでも粘り強い。
声を荒げることもない。妥協することも
諦めることもない、見捨てることもない。
『ハドソン川の奇跡』のサリーと同じで
プロとして自分の果たすべき責任を
全うしようと努力する。

リスクはあった。リスクしかない。
彼がどんなに努力しても、身の危険が
あっても、彼の行いが公になる約束も
なかった。

つまるとこ、そうだ。
人として、どうなんだって話だ。
ドノヴァンの家族は別としたら、
ドノヴァンとアベルだけは、
自分の立場や職務に忠実だった。

3回目だろうか。観るたびに味わい深い。
トム・ハンクスとマーク・ライランスの
演技全てがとても味わい深い。

印象的なのは、冒頭のone,one,oneと、
終盤のtwo,two,twoが対のようになって
いたり、不安はないか?のやり取りが
とてもグッときたり、終盤のドノヴァンの
顔を見つけた時のアベルの表情など。
とても上手いなぁと思う。

オープニングの絵の構図と表情、
車内の乗客と新聞の一面、
車窓から見た壁のある通りと
壁のない通りも、忘れてはいけない。
とてもとても印象的なカットだ。
最初のone,one,oneの台詞以外にも
序盤と終盤で、伏線というか、
対になっているシーンが多い。

ヤヌス・カミンスキー、
トーマス・ニューマン、
マイケル・カーン、
スピルバーグが揃えた布陣も完璧だ。
ときおりユーモアも感じさせる脚本を
仕上げたコーエン兄弟の上手さも
忘れてはいけない。

オープニング。20世紀FOXのロゴに
お馴染みのファンファーレがない。
続くドリームワークスのロゴにも
その後のオープニングクレジットも
とても静かなのが印象的だ。
それはまるで、静かな早朝のような、
誰にも語られない秘密の作戦のような、
息を潜め暮らしてきたスパイの日常の
ような、少しずつ友情を築いてきた
ジムとアベルの声にしなかった語らいの
ような、とても印象深く心に残る。

4.5から5.0へ。最敬礼。

文句なんてありません。
いい映画を観た。深い余韻。
いい映画ってこれですよと言いたい。
WOWOW録画鑑賞。
yukihiro084

yukihiro084