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ブラック・シーのしゃにむのレビュー・感想・評価

ブラック・シー(2014年製作の映画)
3.8
「この潜水艦…センスいかん…」

↓あらすじ
潜水艦一筋30年ベテラン潜水艦技師が時代の煽りを受けて解雇される。男には家族がいたが仕事柄家を開けっ放しにして愛想をつかされて出ていかれた。家族も仕事も失ったドン底の男に友人から儲け話を聞く。大戦中スターリンがヒトラーに秘密裏に投資した大量の金塊を積んだUボートが黒海に沈没、手付かずのままであるという。一攫千金を狙い男は資本家に潜水艦を借りチームを結成、深海へ航海を始める。途中、不仲なイギリス人とロシア人クルーが分け前で揉めて事故に見舞われたが一行はUボートを発見、犠牲者を出しながらも金塊をゲット。しかし、このプロジェクトにはとんでもない裏があり…

・感想
ジュード・ロウ兄貴が過酷な重労働で過労死寸前まで熱演、魅せる漢の海洋ロマン‼︎ クビにしてもなおしつこく絡みつくブラック企業のインモー(陰謀)をぶった切るジュード・ロウ兄貴の漢気に濡れてしまう(濡れたのがハンカチかパンツかは御想像にお任せする) 要は家族からも社会からも見離された筋金入りの負け犬達の人生逆転ゲームである。ドン底まで落ちた男達が更に深い底へ潜って陽の目を見るために浮上する…航海自体が人生の浮き沈みを示唆するようで何やら感慨深い。男臭い挑戦だけでも満足だが、無謀な挑戦の一本調子ではないのだ。大金に目がくらんだお宝探しにありがちな「頭数減らし」の疑心暗鬼に陥るシーンもあり、更にはドン底の更にドン底に叩き落とすブラック企業のブラック過ぎる悪魔の計画も含まれており、濃密な密室人間ドラマの側面も持ち合わせている。加えてポセイドン・アドベンチャーのようにハラハラする展開もあり、ガッツリお腹いっぱいになるボリューム満点の作品になっている。ジュード・ロウ兄貴の漢気ぶり目的で観ても観なくてもそこそこ面白い作品である。

・重労働兄貴
名前の宿命だから仕方ないがジュード・ロウ兄貴はとにかく忙しい役回りである。海の男という人種は人種の壁に関係なく荒っぽい性格をしている。口喧嘩が絶えない。一際厄介なのが人種の違いである。乗組員はイギリス人とロシア人から構成されている。顔を合わせれば罵倒合戦は当然、ロシア人が料理を作れば「イギリス料理の方が美味いぜ‼︎」という自虐ネタで煽って作りたての料理を目の前でひっくり返し、最悪、刃傷沙汰がきっかけで大爆発が起きて死人まで出す始末。こんな奴らと一緒にいたら冗談抜きで喧嘩で沈没しかねない。ジュード・ロウ艦長は遠足に付き添う先生みたいに学校から自宅まで悪童達を送り届ける苦心をする。ロシア人が武装して立てこもると、カタコトで和睦協定、分け前で揉めると何度も丁寧に説得…艦長の職務に含まれる事項かは謎であるが激務だ。取り分け大変なのが、クセのある荒くれ者達を宥めてUボートから金塊を積んだ後である。ある事情から浮上出来なくなる。浮上してしまうと手ぶらで帰らなければならなくなる。骨折り損である。意見は二分する。潜水艦は暴れん坊達が暴れたせいでボコボコで長く潜水していられない。手ぶらで生きて帰るか、死ぬかもしれないリスクを払って金を取るか。究極の選択を目の前にして、意見は分かれて殺人沙汰も起き、ますます大変である。帰ったところで所詮負け犬人生、だが、エゴのためにクルーを巻き添えにしてよいのか…緊迫した葛藤がまた見どころかもしれない。最後の兄貴の決断は粋である。惚れてしまう。男臭過ぎるが個人的に大好きだ。一癖二癖ある海の荒くれ者達のユーモラスなやりとり、負け犬人生からの脱出をかけた大博打、潜水艦映画のドキドキハラハラ、企業の陰謀…など要所に見所があり、飽きずに観られる傑作。
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