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海にかかる霧のコウのレビュー・感想・評価

海にかかる霧(2014年製作の映画)
3.9
異常な環境下に置かれた人間の強欲と脆さを表した名作ですね。

2001年に実際に起きたテチャン号事件をもとにした舞台『海霧』を映画化。
ポン・ジュノはプロデュースと共同脚本に携わっていますが彼の監督作品ではありません。

不況にあえぐ漁村のチョンジン号を舞台に追い詰められた船長のチョルジュが中国からの密航者を陸へ運ぶという闇ルートの仕事を引き受けるが海上警察の調査や悪天候によって思いもよらない事態に陥っていく様や逃げ場のない海上で疑心暗鬼になりやがて正気を失っていく船員たちの様子が描かれる。

韓国映画らしい男どもの卑しさや凄惨な場面を余すところなく表現してはいますが、衝撃的な結末を見所にしたサスペンスと言うよりも、欲望にかられた男達の対立と荒れ狂う海に翻弄される漁船の運命を哀しく描いている作品です。

チョルジュ船長を演じるのは、我らがキム・ユンソク。男らしさと浅ましさが共存したタフな名演でした。「船では俺が大統領で父親だ!」はなかなかの名セリフで好きです(笑)

ストーリーテラーとなるウブで正義感の強い船員を演じたパク・ユチュンもスターオーラを消し去り頑張ってました。

深く余韻を残すラスト…
男達の哀れな顛末を嘲笑うかような女性の逞しさを感じます。
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