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海にかかる霧のdeenityのレビュー・感想・評価

海にかかる霧(2014年製作の映画)
3.0
ポン・ジュノ監督の手掛けた船上サスペンス。後で知りましたが実話ベースだったんですね。そう考えるとちょっとゾッとしますが、映画的演出も多分にあるとは思います。

物語はとある韓国漁船が不漁で経済的に厳しくなり、追い込まれた末に出した答えが朝鮮人密航を行うというもの。リスクこそあれど、成功すれば多額の報酬を得られるはずだったのだが、事態は思わぬトラブルに巻き込まれていく、といった感じ。

この映画で良かったのはタイトルにもあるように霧の演出。韓国ならではの攻めた表現を霧による朧化表現でうまい具合にぼかしていて、はっきりと描いてしまうよりも逆に怖さがあります。

また、それにより壊れていく関係性と人間の本質が見え隠れする辺りもなかなか面白いですね。絶望的な状況でいかに人間の理性というのは脆いのか、というのが如実に現れていたと思います。

ただ、この2点を踏まえた作品って実は『ミスト』がまさにそうでして、あちらは人間心理の普遍性みたいのを感じたのですが、本作には不思議とそれが感じられませんでした。

一つにキャラクターの個性が強すぎるというのがあると思います。まあ追い込まれた状況の人間を誇張して表現したいのかもしれませんが、あの一件以降の怖さというのは些か薄かったように思います。悪くなかっただけにもう一つパンチ力に欠けた作品だったように思います。
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