emily

ザ・レッスン 授業の代償/ザ・レッスン 女教師の返済のemilyのレビュー・感想・評価

3.7
 女教師は正義感を持って、子供たちにお金のモラルを教える立場である。しかしそんな彼女は夫の借金返済へ充ててたお金が全く振り込まれておらず、家を競売にかけられる事になり、必死でお金をかき集めなくてはならなくなる。

 日常の生活音、犬の鳴き声や虫の声などをしっかり拾い、淡々とした描写の中で、一つ解決すると次の難題が待ち構え、どんどん加速していく女の姿をカツカツ鳴り響くヒールの音と、閉鎖的に捉えるカメラ、彼女の後ろにピタッと寄り添りそい描写するカメラと共に綴っていく。静かながらも、巧みに組み立てられた脚本により、徐々にスリリングに、気が付いたら目が離せない展開と皮肉の交差にどっぷり浸かる。

 善の行動は裏目に出る。そうして気が付いたら悪とされてる行動を自らが取るしか出口はなくなっている。それでも日々は流れ、先生としての顔を崩す事はない。抑えめのトーンで、スリリングに展開していく訳ではない。しかし確実にジワリジワリと彼女に忍びより、日常の闇が歩く音のようにテンポを崩す事なく、少しずつが気が付いたら取り返しのつかない事になっているのだ。些細な選択は自分に跳ね返り、皮肉が皮肉を呼び、父親との喧嘩のシーンではわずかに残る自尊心が邪魔をしてくれるのだ。

 ラストも冒頭へつながる、何気ない日常の中で幕を閉じる。結果は全く提示されない。それは一つの選択が巻き起こす偶然の負の連鎖であり、人間のモラルを問う余韻をしっかり残してくれる。極地に立たされた時の人の行動は他人事だから面白いが、明日は我が身である。