調伏系V魔虚羅

草原の実験の調伏系V魔虚羅のレビュー・感想・評価

草原の実験(2014年製作の映画)
4.0
少女は、心地よい風が吹き渡る草原にぽつんと立つ家で父親と2人で生活していた。仕事に出て行く父を見送った彼女は、スクラップブックを眺めたり、トラックの荷台を掃除したりしながら時を過ごす。そんな美しい彼女に地元の少年や、風来坊の少年が好意を抱くもその関係性に次第に暗雲が立ち込めてくるのだった。

果てしなく続く大草原にポツンと建つ小さな家に住む少女と父が過す、ある村の運命。練りに練られた計算し尽くされたカメラワーク、構図、そして自然光が魅せる、大自然の織り成す美しき映像詩でありながら、その美しさ、台詞を排した特異な構成故に残酷さが際立つ極めて現実的な側面も併せ持っている。唐突に訪れる絶望を前にどうやって残り少ない人生を生きるのか、破滅を知って尚も生きる人間の強さと儚さを見た。これが旧ソ連で起きた実話に基づいているという事実。映画の持つ、ある種のパワーを最大限に引き出した紛うことなき傑作であった。
調伏系V魔虚羅

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