「ことばであらわせない」について考えたかったのでえらんだ。セリフが一切ない映画。やさしい響きを持った「草原」と無機質な「実験」の組み合わせが秀逸。声に出さずにぐっと伝える表現力も完璧。もうこれは感動…(絶句)
自然の中にぽつんと立つ小屋、そこで暮らすのはふたりの父娘。隔絶された世界の話なのにむしろ懐かしさすら感じてしまう。のちに始まるふたりの少年との三角関係。少女の髪と銃がカギとなり、大人でも子供でもない「少女」が綺麗に描かれている。髪やカーテンの透け感と自然の光を掛け合わせた映像がとてもここちよい。夜明けと日暮れのたびに、光が透けていく感触がした。
そして迎えるラストとその後の余韻。楽しみを提供されるわけでもなく、考えを押し付けられるわけでもなく、ただただ空気を「味わう」映画。下手にセリフを投げつけられるより、これぐらいがちょうどいい。