セッセエリボー

サルサとチャンプルーのセッセエリボーのレビュー・感想・評価

サルサとチャンプルー(2007年製作の映画)
4.4
同行者にはイマイチ不評ながら、非常にレアなものを観れた満足感でほくほくになりながら生涯学習センターをあとにしました。とりあえず島津三一郎さんのキャラクターが面白すぎて、めちゃくちゃ話長そうだけど多分いつまででも聞けちゃう。会ってみたいな〜〜。
戦前、貧困ゆえにキューバに渡った日本人とその子孫たちを訪ねるドキュメンタリー。うちなーんちゅとクバーノのメンタリティの類似とかを掘り下げたりするわけではないけど、どちらもそれぞれサルサとチャンプルーとして体現されるとおり「混ざり合うことを恐れない」。かの地の日系人は母数が少ないので1世のほとんど全員が同じ記憶を共有していながら、各々の日本に対する思いや記憶はびっくりするぐらい異なっている。個人史と民族史の相互侵食というか、日本/キューバという民族性のブロックの中に個々人がもつ無限のゆらぎがあって、それが複雑に混ざり合って大きなブロックどうしの境界もゆるゆると溶かしていくような、上手く言えないけどすごく面白いものを観れました。それが「百姓」という職業と強く結びついているのもポイント。「うたえバンバン」のキューバ人による合唱とか、キューバ滞在70年にしてスペイン語まったく喋れないけど「ウエボ(卵)」とか単語レベルでスペイン語が混じっちゃうおじいちゃんとか、すごく面白かった。逆に言うとこの映画の面白さってそういう物珍しさによるところがほとんどなんだけど、個人的にはそれでじゅうぶんと思ってるのでかなり好きです。
実在するパノプティコンを初めて見れたのもラッキー。「ヨーロッパではほとんど撤去されたか博物館となったパノプティコンが、この国ではただ見捨てられたままになっている」。