イルーナ

フランケンウィニーのイルーナのレビュー・感想・評価

フランケンウィニー(1984年製作の映画)
3.8
『ヴィンセント』と共に、バートンの初期作品。
前作に引き続き、才能の胎動をじっくりと目にすることができる作品となっております。
しかし、こんな異端な作風かつ、地味に豪華なキャスティング(『ネバーエンディングストーリー』のバスチアン役のバレット・オリバー、『シャイニング』のシェリー・デュヴァル、『デスレース2000年』の監督ポール・バーテル、ソフィア・コッポラ……)の作品を撮らせておいてお蔵入りにするって、ディズニーも相当彼の扱いに困ってたんだろうな……

犬のスパーキー主演の微笑ましいホームビデオ上映会から一転して、スパーキーの事故死、埋葬、復活、騒動、ハッピーエンド……
わずか30分の間に繰り広げられる大騒動。
怪奇ものやB級映画へのオマージュに加え、「排斥される異端」「身近な人たちに潜む悪意」という、バートン作品で何度も使われるテーマがすでにこの頃から登場していたのは興味深い。
さらにスパーキー目線のカメラワークはユニークだし、風車小屋の廃墟が焼け落ちるクライマックスは、とても短編映画と思えないくらいの大迫力。
このシーンは後に『スリーピー・ホロウ』でセルフオマージュされてましたね。
「フラン犬」と化したスパーキーのデザインも、バートンの趣味がしっかりとにじみ出ていますね。
水玉模様が縫い付けてあったり、水を飲むと首元から水が吹き出したり。かわいい。
ちなみにバートンは子どもの頃からすでに映画を撮り続けていたそうで、それを知った後に冒頭を見ると感慨深いものがあります。

ただ短編という都合のせいか、はたまたディズニーのハッピーエンド主義のせいか、近所の人たちが改心する件がちょっと急かな?とも思えたり。
散々化け物扱いしといてこの変わりようはないでしょうと。
それでも、最後はみんなの協力で再び生き返って、さらに彼女までできるスパーキー。
死から復活した者は皆、悲惨な末路や茨の道の運命が待っている中、これは珍しいハッピーエンド。
いつも散々な末路を辿るモンスターに対し、たまには幸せな結末を与えたい。
これもまた、バートンの願いだったのでしょうか。
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