もう戻れないからこそ、青春時代には価値があるし、それを題材にしたフィクションは多数存在する。しかし、実際にそれが私たちの経験したリアルな青春時代なのかと言うとそうではない。フィクションとして消費者を楽しませるために作られる以上、登場人物にはその作品の趣旨に合った青春時代を送ってもらう必要があるためだ。
だが、本作の醸し出す独特の空気感は自分が中学生の頃に感じていたそれに限りなく近かったように思う。特に登場人物の会話シーンは印象深い。台詞というよりも飾らない日常の会話という感じで、本作の独特の空気感を出すのに一役買っていた。
今思い返してみれば些細なことでも、中学生の頃は大事件だった。あの頃の気持ちを思いださせてくれる良作。
