Tラモーン

おいしい生活のTラモーンのレビュー・感想・評価

おいしい生活(2000年製作の映画)
3.8
定期的に観たくなるお久しウディ・アレン。


自称天才犯罪者のレイ(ウディ・アレン)は「銀行近くの空き家を借りそこからトンネルを掘って金庫を襲撃する」という強盗計画を思いつく。偽装のため、妻であるフレンチー(トレイシー・ウルマン)に空き家をクッキー屋として経営させるが何故だかこのお店が大繁盛。仲間たちと銀行を目指すレイのトンネル掘りは一向に進展せず、皮肉にもフレンチーのクッキービジネスは次第に巨大化していく。


ウディ・アレンらしいウィットに富んだマシンガンのような皮肉たっぷりのセリフと、ドタバタクライムコメディがベストバランスでマッチした作品。

強盗軍資金を出せ!とムキになるものの全く妻には敵わない情けない夫と、夫には汚い仕事には手を出してほしくない!と堅実に生きられればいいという気の強い妻の関係性が面白可笑しく描かれるあたりからクスクス笑えて引き込まれる。

"こうなりゃ力ずくだ!"
"ヘルニアのくせに"

偽装のために始めたクッキー屋の地下でレイがトンネルを掘ろうとして水道管を破裂させるシーンなんてドリフかと思うほどベタベタさ。そこに絡まるウディ・アレン節の皮肉の効いたセリフ回しがたまらない。

"お寒いスタートだ"
"水道管と闘う夫なんて滅多に拝めないもの"

大繁盛するクッキー屋に、びっしょびしょに濡れた姿でしょんぼりと現れるウディが面白すぎる。

そのままクッキー屋が軌道に乗ってしまい、あっさり1年後には大企業に!なんの教養もないまま重役に就いた犯罪仲間たちと、完全に成金趣味に溺れるレイとフレンチー。間抜けたTVインタビューの皮肉さがまたウディ・アレンらしい。
クッキー成金になったことから社交界に入りたいと願うフレンチーと、元のままの怠惰な生活を続けたいレイ。貧乏ながら仲良くやっていた夫婦の関係性が変わってくる。

"音楽を変えろ。宮廷のカツラをかぶりたくなる"
"ハゲかくし?"

ここから登場するデヴィッドを演じたヒュー・グラントが若い!カッコイイ!チャラい!お金目当てにフレンチーに取り入るイケメン野心家っぷりが似合う。
フレンチーが社交界に入りたい一心でデヴィッドにオペラや観劇など教養を叩き込まれていく一方で、そんな彼女についていけず1人寂しく生きるレイ。

実は以前と変わらない人生を送りたかったのはレイのほうだったんだな。

"化学調味料の入ったギトギト中華は最高さ"

その一方で変わっていくフレンチー。やっぱり女性ってこういうときに前向いて変われる人が多い気がするなぁ。

"人生には肉団子より面白いことがあるのよ"

そんなこんながあっても結局ラストはみんなでハッピーエンドなのがウディ・アレン作品の素敵なところ。
フレンチーの社交界教養と、シリンダー金庫の開け方の伏線回収お見事でした。
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