セデック

おいしい生活のセデックのレビュー・感想・評価

おいしい生活(2000年製作の映画)
3.9
普通に面白い映画だし、毎年こんなレベルで作品を量産し続けるのは、本当に凄い。
ウッディアレンは、スピルバーグやマーティンスコセッシ、デパルマ、ルーカス、コッポラなどの70年代第二次黄金世代のハリウッド監督達と比べると、同世代や後進への影響力が殆どない(ウッディアレンの映画術で証言済み)。
なのに、2016年の「カフェソサエティ」を加えると66年の監督デビュー以来、ほぼ毎年一本ペースで48作品も作っている。しかも、ほぼ全てオリジナル脚本。
50年以上も自分の映画を好きなように作る監督は、彼以外にいないと思う。
学生映画や自主映画にたずさわるインディペンデント系監督や自分の作品の権利を大手スタジオや製作委員会方式から守る為に闘っている映画作家など、作家性を発揮したがっている人間にとっての理想像が、ウッディアレンなんだと思う。
アカデミー賞に24回もノミネートされているのに、授賞式には出席しない。
しかし、高額なギャラを提示されたら糸井重里が手掛けた西武のCMにも出るなど意外に俗物的な所がある。

尊敬するコメディアン・ボブホープと巨匠イングマール・ベルイマンという正反対の偉人2人の影響を受けたせいか、作る映画はいつも死や恋愛や結婚生活への不安と悩みと言った悲観的な題材を扱っている。
と同時に皮肉がきいたコメディでもあるので、鬱っぽくて爆笑出来る不思議な映画スタイルになっている。
でも、唯一の不満は、名前は聞いたことあるけど、一本も見たことがない人が多い事。
おそらく身も心も割礼しきった宗教嫌いで、知識マウント全開のえせインテリのくせに、中身はスラップスティックコメディが大好きな庶民派映画お宅にしか受けないんでしょう。
「野球の試合中継を見たいから、6時までには撮影を終わらせたい」との発言から分かる通り、映画に対する執念はそれほどない。
初期の頃は何でも自分でやろうとする完璧主義者だったけど、ある時、自分のプライベートを犠牲にしてまで映画に没頭するなんて本末転倒だと悟る。
そう、あくまで仕事と割り切っている。
ハリウッドの5、6台使うマルチカメラ方式ではなく、邦画やヨーロッパ映画のように1、2台で長回しのロングショットを撮る。リハーサルもやらずにいきなり数分間の演技をさせるので、集中力とある程度の即興が求められる。
アレン映画に出演すると、この条件をクリアした演技派俳優として一定の評価を得る。
だから、業界人はこぞって彼の映画に出たがる。
過去作や海外映画のリメイク、視覚効果多用のヒーロー映画に飽き飽きし、中年や老齢を主役にした大人の映画の需要がなかなか無いハリウッドを嫌う人にとっては、魅力的なんだと思う。
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