むーしゅ

おいしい生活のむーしゅのレビュー・感想・評価

おいしい生活(2000年製作の映画)
2.8
 Woody Allen監督作品。原題は"Small Time Crooks"、小悪党たちみたいな。邦題の「おいしい生活」は1982年にWoody Allen本人がイメージキャラクターを務めた西武百貨店のキャッチコピーから引用しています。Woody Allenが書道でそのコピーを書いた姿のポスターが印象的です。こういうモロあやかりって良いんだろうか、それとも考案者の糸井重里氏にお金払ったのかな。

 元ギャング(に見えない)のレイは友人と、銀行の隣の空家から穴を掘って銀行強盗をする計画を立てる。ところが地下洞窟堀りのカモフラージュために始めた妻フレンチーのクッキー屋が予想外に大繁盛してしまい・・・という話。ではないですね笑。そんなかんじでまとめられているあらすじを読んで観賞したのですが、実際はここまでも序章で、この後突然大金持ちになった夫婦が上流社会の仲間入りをするものの、環境の違いに苦戦をする話。実際前半のクッキー店のくだりではセットもかなりチープなので、Woody Allen自身もどうでも良いと思っていたのでは。特に地下で穴を掘ってるシーンは会話より動きで笑いをとろうとしている感じもあり、安いコントを見せられた気分。まぁでも序章なんで許します。その後、妻フレンチーの上流階級指導員としてHugh Grant演じるデヴィッドが出てきますが、こいつがくせ者。ロマコメの帝王時代が懐かしくなるくらい嫌みな役です。アメリカとヨーロッパではイギリス人に対する印象が全く異なると言われますが、こういう嫌みな紳士はまさにアメリカ(日本も一緒)からみたイギリス人のステレオタイプ。まぁ映画でイメージが形成されるところも大きいので、卵が先か鶏が先か論争ですが。

 ストーリーに戻って、上流階級に入った二人は案の定まわりから馬鹿にされます。自分もそんな世界に仲間入りしたいシンデレラ思考の妻フレンチーと、そんなことよりハンバーガーが食べたい夫レイ。この辺りの二人の選択の違いはなかなか面白いです。またそれぞれに新しい恋を見つけそうになったり、次第に世界がずれていきます。しかしそこはWoody Allenの映画ですから、そのままのかたちでは終わらせません。もちろんWoody Allenが一番幸せになるし、女性からももてるエンディングに向かっていきます。Hugh Grantと王子様&お姫様ごっこをしてる妻をしっかり馬鹿にしつつ、自分はそれなりに良い選択をする。これこそ自分のこと大好きなWoody Allenらしい。多分このひとは自分の容姿を自らネタにしたとしても他人に馬鹿にされるのは嫌なタイプです。自分で演じないほうが良い作品が作れると思うんですけどね。

 ということで本作の全体を通した感想は、今回もWoody Allenは幸せみたいでよかったね、です。最後まで見ても全く「おいしい生活」の意味はわかりませんが、本来のキャッチコピーは、百貨店が提供する豊かな生活というような意味のようです。
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