パンケーキレンズ

エレファント・ソングのパンケーキレンズのレビュー・感想・評価

エレファント・ソング(2014年製作の映画)
4.0
戯曲が元ネタの映画って、空間的に密室性の強いものが多いんですけど、この映画の場合、ほとんど変更されなかったというセリフがとにかく秀逸で、それによって、治療室と取り調べ室という二つの空間に於ける、背景の広がりと、心情の深まりがお見事で、ただただ取り付かれました

戯曲が初めてカナダで公演されたのが2004年で、作者(=映画の脚本家)は当時26歳だったそう
今のドラン君と同い年なんですよ
ドラン君もすごいけど、この作者もすごいな・・・

一つのセリフの中に、膨大な事実と感情が詰め込まれてる映画なんですよね、とりあえず

「消えた医者の行方」から、じわりじわりと「マイケルの本心」へとサスペンス性がスライドしていくのです

狂言の裏側に隠されてるのは

復讐か、甘えか、絶望か・・・

3つの約束をさせてる時点で、マイケルは初めから「そうするつもり」だったわけで、それが彼にとっては最後の手段であり、最後のチャンスだったという事実が切ない

母親の愛情に絶望し

精神病棟からただ出たい

でも、外の世界で待ってるのは、あの日の記憶

野生の象が、僕の行く末・・・

そのマイケルの本当の目的を露呈した時に、今度は、院長の心情へと帰着していくという、抜かりのないクライマックスに度肝を抜かれる

「Forgive me」

それはマイケルが一番欲しかった言葉・・・

そして
娘の喪失も、この時初めて埋められたのだろう・・・

二つの喪失によって生まれる新生が、そこにあったのです

一つ一つのセリフが、重要な意味を持っているという点では、ドラン君の迫真の演技が鳥肌ものだったし、その裏側の感情(本心)を全て隠すわけでもなく、逆に全て表すわけでもなく、観客にチラリと見せる上手さが秀逸で、実は2.6回くらい観たんですけど、挑発されまくりでした

特に
トイレの個室での、ドラン君のドアップが素晴らしい♪

その時の感情を推し量ると、身動きが取れなくなりますよね、ほんと・・・美しく絶望的、この一言に尽きます