愛鳥家ハチ

エレファント・ソングの愛鳥家ハチのレビュー・感想・評価

エレファント・ソング(2014年製作の映画)
3.1
チャールズ・ビナメ監督、グザヴィエ・ドラン主演作品。精神科医グリーンと患者マイケル(グザヴィエ・ドラン)との密室での対話を描く人間ドラマ。ニコラス・ビヨンの舞台劇を映画化。患者によってニンジンをぶら下げられた精神科医が右へ左へと翻弄される様を描いています。

ーー職業倫理
 患者であるマイケルは失踪した別の精神科医の情報を知っている可能性があるということで、院長のグリーンがマイケルに対話という名の"尋問"を仕掛けます。もちろんこうした聞き取り行為自体はなし得るにしても、精神科医としてはきわめて慎重に事を進めるべき事案だといえます。しかし、対話に際して患者側が一方的に条件を課し、精神科医がそれを丸呑みにする描写があり、つい首を傾げてしまいました。精神科医の職業倫理に詳しいわけではありませんが、内容が内容なだけにおそらく何らかの倫理規範には抵触していることでしょう。あくまでも精神科医は捜査機関では無いわけでして、確かに情報が必要だとはいえ、患者を治療し善導すべき立場の者が功を焦るあまり突飛な行動に出てしまうのには違和感があります。これらは作品が伝えようとしている主要なテーマに比べれば些末な点なのかもしれませんが、どうも気になってしまい物語に入り込むことが出来ませんでした。もっとも、正常な判断を出来なくさせるマイケルの巧みな話術をあえて際立たせるために必要な演出だったとはいえそうです。

ーー総評
 本作は、状況を意のままに操ることで相手の気を引きたい青年と術中に嵌った精神科医との間の先の見えない会話劇が魅力です。道化のようにおどけながら物語の核心に迫るグザヴィエ・ドランの演技も見逃せません。
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