けーはち

マイ・ファニー・レディのけーはちのレビュー・感想・評価

マイ・ファニー・レディ(2014年製作の映画)
3.0
元娼婦の新人女優のインタビューから始まる、グランドホテル形式のロマコメ(ラブコメ)ドラマ。

★『ペーパー・ムーン』等のピーター・ボグダノヴィッチ監督による古臭いスクリューボール・コメディ。何組かの風変わりな男女が入り乱れて恋愛・喧嘩、実は親子&知り合いだと判明するなど、ドタバタ展開する。ブロードウェイで篤志家が娼婦を女優に押し上げる(現代では多分に欠陥のある性意識)というショービズ界の裏側の群像喜劇。

★この映画はボグダノヴィッチ監督の恋人、ドロシー・ストラットンにあるいは在り得たかも知れない幸せな未来を描いたもの。ドロシーを「PLAYBOY」誌から芸能界に売り出したのは、クラブ・プロモーター兼ポン引きであった彼女の夫、ポール・スナイダー。ボグダノヴィッチ監督とドロシーとは映画のオーディションで出会い交際し始めたが、スナイダーは私立探偵を雇ってその動向を探り、やがて彼女を犯して殺し、屍体に陵辱を加えた上で自らも死を選ぶ。後に監督はドロシーの妹と結婚したが、彼女との共作で本作の脚本を作成する。21世紀になってウェス・アンダーソンらが製作に回って映画化し、実際に起きた事実の要素を分解・改編・再構築して、こじゃれた喜劇に仕上げてみせた。ちなみに、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの「カリフォルニケイション」で、「最初に生まれたユニコーン」と歌われるのは、カリフォルニアに墓地があるドロシー・ストラットンのことだそうだ(本作の劇中には、突然ユニコーンの絵が出てくる)。

★そんな訳で、幾多の悲しみを心裡に背負い込みながらも、舞台の幕は上がり、喜劇は続く。「ショー・マスト・ゴー・オン」である。ただ、本作は落語みたいな気の利いた会話劇の連続で、果たしてオチはどうなるんだろうと期待していたんだけど、何かなぁ……ぼやっと終わっちゃっているんだよなぁ……いや、「こうなってたらなぁ」のifの世界線だから、そうなるのは分かるんだけどなぁ……。