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モアナと伝説の海のTSのレビュー・感想・評価

モアナと伝説の海(2016年製作の映画)
4.1
【いざ壮大な大海原へ】87点
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監督:ロン・クレメンツ/ジョン・マスカー
製作国:アメリカ
ジャンル:アニメ
収録時間:103分
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2017年劇場鑑賞26本目。
先祖返りしたような作品。近年のディズニー作品と比べるとミュージカルが多いですし、何と言っても大海原の映像が途轍もなく綺麗。話は普通ですがいわばディズニー歴代作と同じような構成で王道とも言えます。

とある島で生まれ育ったモアナ。島にはサンゴ礁より奥の海には出てはいけないという掟が古くからあった。成人の儀式を迎え、無事に成人になったモアナは何度も海に出ようとするのだが。。

今回の世界観は南国。モアナを始め、テ・カァやマウイなどの名は、南国諸国の言語からきているものだと思われます。例えばイースター島においてはモアイ像をはじめ、最高神であるマケマケなどはなんとなくこれらと響きが似ています。今作はそういった世界観の中、王道の展開がされていきます。ディズニー作品によくありがちな、「行ってはならない系」から始まります。『美女と野獣』や『リトルマーメイド』のように、あそこは危ないからいってはいけないという親や知人の言いつけを破るという行為はディズニー作品によくあることです。その結果、一時的には主人公は危ない目に遭いますが、伝説的な存在と出会い、ファンタジックな世界に誘われます。今作もそれらのディズニーの王道の展開を踏襲しており、話の展開の予想は容易に出来ますが、容易に出来るからこそワクワクさせられます。

中盤から出てくる半神半人のマウイも印象的なキャラクターです。思い出すならばジーニー的な存在。神のはずなのにどこかぬけている。そのギャップにどことなく愛着心を感じてしまいます。中盤以降は主にモアナとマウイの二人の旅なので、少し寂しい感じもしますが、それを補うように大海原の偉大さを伝えてくれます。
また、途中で出てくる海賊は、いかにもマッドマックスを思い出されましたが、鑑賞後調べると、やはり意図的に作製したものらしいです(笑)

今作独自の特殊なメッセージ性はあまり見受けられませんでしたが、昔の掟やルールにとらわれずに自分の目で確かめてみよう!という従来からのディズニー的メッセージは今作からも感じ取れました。いわばこのメッセージは反教育的です。親の言うことを守らないからです。何もかも反抗的になってはいけませんが、巨視的に見れば、幼い頃から自分で見たり聞いたりして物事を判断していこうというディズニーの願いなのかもしれません。
特殊なメッセージというか、強いて言えば女性の逞しい姿を描いていた点がかなり印象的でした。これまでの昔のプリンセスは、主人公ではありますが戦闘的なものはプリンス的存在に委ねるきらいがありました。そもそもディズニー創立以来、恐らくですが半分近くの作品において女性が主人公というのは素晴らしいことだと思います。その中で今作のモアナは特に果敢な女性だと見受けられました。

間違いなく『十戒』(映画というか神話としてのシーン)のオマージュの部分もありますし、映像的には最後まで飽きない作りになってます。再三申し上げますが、物語の展開やメッセージ性は王道。しかしそれ以上に世界観や映像、そしてアカデミー賞歌曲賞にもノミネートされた「How far I'll go」が素晴らしいので映画館で見ても損をしない作品と思われます。個人的には、『ズートピア』には一歩及ばないものの、十分な佳作と感じました。
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