えんさん

モアナと伝説の海のえんさんのレビュー・感想・評価

モアナと伝説の海(2016年製作の映画)
4.0
日本語吹替え版にて。

数々の伝説が残る島で生まれ育ち、ある体験から海と運命的な絆で結ばれた16歳の少女・モアナ。彼女は小さいときから、海に愛されて、海とともに育ってきた。海への冒険への憧れを持ちつつ、首長である父親の跡取りとして、島のことも気に留めていた。そんな中、暗礁の向こうへは行ってはいけないという島の掟ができた理由を、祖母タラから告白される。それと同時に、全能の女神テフィティのハートが半身マウイによって奪われたことにより、やがて島の平和は脅かされるようになることを予期される。タラの教えの通り、どこかともなく闇が訪れ、果物は果物は腐り、魚は獲れなくなり、生活は危機的状況になりつつあった。モアナはマウイを探し、奪われたテフィティのハートを探すべく、大海原へ冒険に旅立つ。「リトル・マーメイド」「アラジン」のロン・クレメンツ&ジョン・マスカーが贈る、美しい南の海が舞台のディズニー・アニメーション。

ハワイが舞台の作品だとてっきり思っていましたが、調べてみるとどうやら設定は、オセアニアの南の島ということだとか。それでもハワイのようでもあり、同じ島国に育っている(と思っている)日本人にとっても、この物語は受け入れやすいと思います。オセアニアや東南アジアの国々(まぁ、ハワイもそうかもしれないですが)は、長く狩猟民族が中心となっているだけに、日本の神道のような土着の神々という文化が広く根付いています。日本人ならこれは当たり前の感覚なんですが、欧米の特に一神教の国にとっては、こうした文化圏が酷く後進的に思えるらしいです。だから、本作がアメリカなどで公開されたときは、そうした文化圏に対する差別問題とかも提起されたらしいのですが、映画を見る限り、そんなことはないように思えてしまいます。「もののけ姫」であったり、「千と千尋の神隠し」であったりのような、自然を敬う神々の物語ですらエンターテイメントにしてしまう日本にとっても(笑)、本作はしっくりくるように思います。

そうした文化的な背景論は横において、本作で目を見張るのは、すごいクオリティでのCG描写。水や火というのは、CGにとって難敵で、いかに人工的に思えないようにするかというのは長年研究されてきたところなのです。もう本作になると、本当に自然に見えてしまう。水や火どころか、木や風、雲などもとことん本物と寸分違わないので、CGのキャラクターですら自然に見えてしまう。もはやリアルなとアニメの描写の境界線が本当にボヤケたものになってきたなというのが、今更ながら驚かされるのです。それに本作は物語を推進していく歌であったり、リアルな自然を忠実に再現するためのサウンドであったりが、とてもいいんです。スクリーンを通して、波しぶきであったり、モアナが操縦する筏が受ける風であったりが、やってくるようなのです。僕は小さいときに、父親のヨット(カヌーっぽいやつですが)に一緒に乗った思い出があるのですが、あのときの感覚を思い出してしまいました。4DX版も公開になるそうなのですが、それで観るのも一段と楽しいかもしれません。

物語を通しても、あの大ヒットした「アナと雪の女王」よりも僕はいいなと思います。1つ惜しいなと思うのは、「アナ雪」に登場する雪だるまのオラフのような、ディズニーらしい小狂言回し的なサブキャラクターがでてこないこと。序盤、一緒にいた子ぶたっぽいのがそれになるのかなと思ったのですが、着いてきたのは訳の分からないヤツだし。。でも、全体的に夏を先取りしたような楽しい作品になっていると思います。