おーもり

モアナと伝説の海のおーもりのレビュー・感想・評価

モアナと伝説の海(2016年製作の映画)
4.0
"島の中での村長(むらおさ)"としての皆の期待と、"外海への憧れ"という自身の夢。
将来への悩みを抱えたモアナ。
普通のパターンだと悩んだ末に皆を納得させるか、無視して振り切って新たな世界へ旅立つってのが物語の第1章な事が多いけど、モアナはちょっと違った。
島で役目を全うする覚悟はほとんど固めてたんだよね。
その決意の歌の合間、木陰から覗くおばあちゃんの何年も変わない後ろ姿がチクリと心を刺してくるのは流石ディズニー。
一切無駄ない語りと魅せ方があざやか過ぎて毎度完敗です。

唐突に海に選ばれ、島へも異変も起きて、単なる自分の夢だった外海への冒険が、村の為世界の為と上手く一致したもののいきなり肩の荷が重くなる。
劇的な展開とともに、使命感や逃避、未知への好奇心、不安と葛藤といった様々な想いに掻き立てられる様に船出するシーンにはもう涙が抑えられなかった。
カップルとファミリーに挟まれたぼっち鑑賞ながら、このシーンでボロ泣きしてしまいましたよ。
こんなにエモーショナルな旅立ちって他にもあったかなぁ。

マウイと出会ってからはディズニーお得意のバディ物でまぁ楽しい楽しい。
マウイの無自覚能天気バカっぷりは呆れるほどだけど、それに流されないモアナの強い決意が超エライ。

出てくるヴィランが今回尖ってて怖っっわッ!って思った。
ココナッツ海賊団の見た目と反する無機質な暴虐さ。数と読めない表情が恐ろしい恐ろしい。
神の釣り針を持つ巨大な蟹のタナトア。こいつは久々に極悪なキャラだと感じた。
歌にのせながらマウイをいたぶる所とか、時計仕掛けのオレンジのあの名シーンを思い出したし、ブラックライトで浮かび上がるおぞましい本当の姿にゾッとしたよ。

後半の展開はジブリっぽさをふんだんに感じるも、圧倒的な映像美や迫力にどうしても引き込まれた。
主役二人の距離感がああなるのも、世情をよーくみて話を組み立てるディズニーの考えなんだろうなぁ。

とにかく、モアナの旅立ちまでの葛藤に1番心揺さぶられて涙しました。そんな旅立ちの後の冒険は否応なしに応援したくなる、まんまとのせられた良作でした。