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レインツリーの国のodyssのレビュー・感想・評価

レインツリーの国(2015年製作の映画)
3.5
【関西弁だからこそ】

ラブストーリーだというだけの予備知識で映画館に足を運びました。

なので、最初の病院のシーンはともかくとして、その後の東京での筋書きには「ずいぶんありきたりな展開だな」と思いましたが、初デートの最後で、ああ、そういう映画だったのだね、と納得しました。

という観点から見て本作品は、まあ悪くない水準だと思う。こういう映画ってどうしてもきれい事になりがちなんだけど、ここでは主人公(男のほう)が大阪出身で関西弁で話していることが利いているのではないでしょうか。

つまり、本音を言いながらもどこか柔らかいのが関西弁。これが東京語(≑標準語)だと、本音を言うときつく響くし、かといって相手に配慮すると本音を言えないし、となってしまいそう。その辺で、主人公が関西出身であくまで関西弁で通しているところがうまい。これによって、女性側にハンディがありながら本音をぶつけることが可能になっている。

ただし、全体の設定にはやや浅いところもある。特にヒロインが勤務する会社。悪口を並べる同僚OLや、初老のセクハラおやじなど、あまりにも類型的な人物ばっかりで、興ざめです。仕事をしていく上でヒロインの背負っているハンディが具体的に(単なる人間関係ではなく)どう影響するかなど、ちゃんと描くべきだと思う。

あと、ヒロインは会社では基本的にしゃべらないらしいんだけど、主人公とは一応ふつうに話しているし、大阪の実家に連れて行かれたときも主人公の母とはふつうに話している。ちょっとその辺が、ご都合主義に過ぎますね。

そういう欠点はありますけど、上にも書いたように、きれい事にならない恋愛映画として、まあまあの出来と言えるでしょう。
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