革芸之介

真夜中の妖精の革芸之介のレビュー・感想・評価

真夜中の妖精(1973年製作の映画)
3.6
バーのママ、大山節子に売春をさせられている白痴の山科ゆりは売春相手の客を「おとうちゃん!」っていつも呼んでいるマジカル不思議ちゃんな女の子。ある日この売春バーに凶悪犯、風間杜夫が現れる。本作の風間は金持ち宅に強盗に入り、ついでにお嬢様な潤ますみをレイプしちゃって、他人の幸せをぶち壊したい衝動をもつ危ない若者。

売春バーで大山節子にからみ、暴れる風間杜夫。しかしここに大山の情夫の益富信孝が登場。(この益富信孝さんは、曾根中生の傑作『わたしのSEX白書 絶頂度』にも出演していた)で、風間杜夫をボコボコにする。強盗してレイプしてた奴とは思えないほど、弱すぎる風間杜夫。そして強すぎる益富信孝。

しかし、マジカル不思議ちゃんな主人公山科ゆりは、このボコボコにされた風間杜夫に恋をしちゃう。最初はうざがっていた風間杜夫も、しだいに山科ゆりの純粋さに惹かれ、二人の間に特別な感情が生まれる・・・・。

鬼才・田中登監督作品。シネマヴェーラの特集上映で鑑賞。田中登は『㊙色情めす市場』や『人妻集団暴行致死事件』などの映画史に残る大傑作を撮った監督だが、本作は、ちょっと普通かなぁ。まぁ、それはしょうがない。

でも随所に田中登らしいセンス溢れる映像は見ることができる。最初の山科ゆりの濡れ場における、スイカの緑と、花びらの赤と、山科ゆりの裸体の白が目立つ色彩感覚が強調された濡れ場は見事だと思う。

廃線跡に置かれたテーブルやドラム缶や、バーがある路地などロケーションもなかなか良い。

でも、脚本はちょっと問題あるかなぁ。お嬢様の潤ますみを拉致して海の砂浜に埋めたりするシーンは、ちょっと寒いギャグみたいで笑ってしまった。

ウェディングドレスの姿の山科ゆりが、潤ますみの結婚式に殴り込みして、潤ますみの頭が狂ってしまう場面は凄すぎる。潤ますみの妄想が具現化されるのだが、切り裂かれるウェディングドレスにクローズアップされる白い布、切り裂かれるドレスの下はマネキンになったり、山科ゆりの裸体の画面にカットを繋いだりする狂った編集でこのシーンのカオス感は凄まじい。このあたりは、やはり田中登の映像美学なのでしょう。
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