垂直落下式サミング

マウス・オブ・マッドネスの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

マウス・オブ・マッドネス(1994年製作の映画)
4.4
カーペンターがノリノリで描くホラー作品。
本来B級と呼ばれるような低予算ジャンル映画の中から次々と名作を発表してきたカーペンター監督の作品は、西洋文学のような品位を伴いながらも世俗的で親しみやすい。彼は堅実な映画の作り手でありながら、エネルギッシュな作家でもある。もはや「夏の怪談特集」に決まって出演する稲川淳二のように定番化し、彼の作品は一定の水準が確実に担保されたものとして安心して観られるのだ。
小説に書かれた内容が現実に影響を及ぼし空想が現実を浸蝕していくストーリーで、ありがちな展開ながら他とは一味違う確かな演出力で映画世界に引き込まれる。虚ろな空想が現実にはみ出してくる混沌とした非日常描写はお手のもので、毒々しいクリーチャーの見せ方にも確かな論理性を感じる。何もかもが最高だ。
ラグクラフトの怪奇小説を追体験するかのような無邪気なストーリーで、カーペンターのホラー好きな一面やジャンル映画愛が垣間見れる幸福な作品だ。 何でこんなに面白いんだろう。