CHEBUNBUN

昔のはじまりのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

昔のはじまり(2014年製作の映画)
3.5
【ラストが惜しい】
フィリピンの怪物監督ラヴ・ディアスの5時間半の大作。MUBIにて400円でレンタルされていたので観てみた。

本作は1970年代、フェルディナンド・マルコスの行き過ぎた独裁政治で戒厳令が発令されたあの時代をバックに描く叙事詩である。

なんだけれども、歴史的背景の説明描写は然程されず暗号になっている。観客はラヴ・ディアスという映像写真家の展覧会を歩き、インスピレーションの塊から何かを感じ取る必要がある。

今回は前半1時間にとてつもなく素晴らしいシーンがあった。草原の果てに人々が集まる。そして、段々と観客の方に歩いてくる。どうやら病気の人を運んでいるらしい。そして、儀式の間で、大自然の男と民族音楽がビートを刻む。これが、ブンブンの心をがっつりと掴んだ。

戒厳令で、民兵が村を支配する3時間20分過ぎまで動きは少ない。人が倒れたり、火事になったりするが、その正体が分からない。1970年代のじっとり段々と押し寄せる闇の不気味さを《時間》でもって演出し、民兵の支配は一度始まったらあっと言う間に恐ろしい形となって襲いかかってくる。ラヴ・ディアスにしかできない手法で、当時の恐怖を観客に刺してくる。

ただ、本作は終盤詰めが甘い部分が目立った。特に筏を燃やす下りは、別に上映時間伸びても良いのでカットを割らない方がよかったと思った。
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