エミさん

ルイの9番目の人生のエミさんのネタバレレビュー・内容・結末

ルイの9番目の人生(2015年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

試写会にて。
英国作家リズ・ジェンセン原作のヒューマンミステリー。
舞台はサンフランシスコのとある街。

主人公は、アンニュイな雰囲気漂う9歳の少年ルイ・ドラックス。色白で線が細く幸薄そうな美人の母と、酒好きで元ボクサーだった、いかにも残念な父…という、絶対、何かありそうなトライアングル家族である。

散々、トレーラー多方面で、ルイは9回も危ない目に遭う少年であることが謳われていたので、物語はルイのナラティブで進行していくのは必定であったが、登場人物は多くないし、展開される出来事もそれほど複雑でもなく、原作を読んでいなくとも理解出来るのだが、あまりにもストーリーが淡々と進んで行くため、この物語がミステリーなのか、それともファンタジーに転ぶのか、判断のつかないまま、もどかしさと同時に、はやる気持ちで、結局のところ、すっかり釘付けになってしまっていました。

現実のルイは、9度目の事故に遭い、昏睡状態のままだし、父は行方知れず、残された母は支えたくなるような不安定な状態、ルイを診察するパスカル先生も、過去に数ヶ月だけカウンセリングを担当していたぺレーズ先生も、垣間見える人となりが何だか胡散臭い。
淡々と進んでいたはずの物語は、気付くと沢山の伏線を繋ぎ合わせる作業が大変なくらいに膨れ上がっていて、怒涛のようにネタバレさせたラストを知った時には、「そういう類いの話だったんだなぁぁ〜」と、予想外の着地点に心底驚かされて鳥肌が立ってしまいました。

上手く観客を引っ張っていく、本当に良くできた秀逸な脚本でした。私はこの映画は、ミステリー仕立ての展開になっていますが、社会風刺も含んでいると思いました。

結局、人間の心が1番、目に見えず恐ろしいと思わされました。
人は、いかに見た目で騙されてしまうかがよく分かります。

わずか9歳で、自分はどうすればいいかが判っているルイが、とてもけなげで哀しくて、最後に選んだ選択も切なすぎて心が痛くなってしまいました。