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ルイの9番目の人生のumisodachiのネタバレレビュー・内容・結末

ルイの9番目の人生(2015年製作の映画)
1.8

このレビューはネタバレを含みます

へんてこりんなダークファンタジーを期待していたのだが、全然違った。

『シックス・センス』を観たことがあったり、同種の事件を知っている人間ならば、プロローグの段階でオチは読めてしまう。ファンタジーではなく、サスペンスの部類だった。終盤の展開はちょっと強引だと思うし(憑依とか催眠とか)、私の感覚ではB級映画の部類。

予想通りのオチに迷いなく向かっていくので、段々嫌気がさしてきたのだが、病院でのセックスシーンで完全に戦意を喪失した。いやいや、あり得ないでしょ。

『ネオン・デーモン』を観たときの嫌悪感に似ているのだが、私は、<女は怖い>というテーマが見え隠れする映画が嫌いなんだと思う。魔性の女に全責任を負わせるのはやめてくれ。

洞窟での対話シーンは感動的なのかもしれないが、私は見ていてムカムカした。「お父さん(継父)はルイを心から愛していたのに」とでも言いたいの?本気?

お父さんもカウンセラーだった医者も、母の異常性に気付いていたのに何もしなかった。キッチンを隠し撮りでもしていれば一発で証明できたのに、それすらせずに逃げ出したわけで。カウンセラーだった医者も、「処分権」の話が出た時点で気づかなかったはずはない。病気の母親と、彼女に縛られている息子。彼らを救えたはずの人たちは離れていったのだ。

その事実を強調した上で、ルイの切ない願望として洞窟での対話シーンを入れるのならばわかるが、あの描き方では十分に伝わらないだろう。「大人の男は嘘つきだ」と、"all men"に対する不信感をルイは度々口にしていたし、鈍感な男たちと異なり、女刑事と父親の母親は最初から真実を見抜いていた。男の愚かさや男たちの欺瞞を描いているつもりなのだとは思うのだが、昼メロサスペンスみたいな構成のせいで「女ってこわーい」という印象が強くなってしまっている。

『ラブリー・ボーン』みたいに、最初から最後までルイの内なる目に軸足を置いていたならば、また違った印象になったかもしれない。母親との過剰な結びつきも協調されたと思うし。

母親は間違っていたけれど、ルイを愛していたんだよね?自分と同一視してしまうほどに。だからこそ、ルイは母の気持ちに応えようとしてしまったんだよね?

その部分をしっかりと描いてほしかった。

ルイ役を演じた少年も、母親役のサラ・がドンも素晴らしかったし、映像の雰囲気や美術や衣裳も良かっただけに残念。
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