このレビューはネタバレを含みます
「Mattoの町」とは精神病院のこと。イタリアの精神医療に革命を起こしたバザーリアの生涯を中心に、イタリア国営テレビが製作した3時間の大作。わかりやすく、かつ誠実に作られていて、こんな作品にならテレビによって〝啓蒙〟されたい(笑)。
患者の象徴的な代表としてそのライフヒストリーに光をあてられるのは、性的な抑圧に人生を狂わされる女性(厳格で冷たい母親が性暴力の被害者であり、売春をして生き延びてきたことが後にわかる)と15年もの間、病院のベッドに縛り付けられてきた男性(少年時代から彼をどんな戦争のトラウマが苦しめてきたのかは、遂に観客にしかわからない)。患者を「苦悩する人」と捉える視点が貫かれていることに打たれる。
革命は一日にしてならず、また、一人ではならず。折から〝学生たちの叛乱〟の時代で、理想に燃えた若者たちがバザーリアを信頼し、時に反撥しながらも、同じ道を歩んだ。
愛すべき優れたコメディ『人生、ここにあり!』(2008)はこの後日譚にあたる。
19日から渋谷のUPLINKで公開。