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龍三と七人の子分たちのnetfilmsのレビュー・感想・評価

龍三と七人の子分たち(2015年製作の映画)
3.6
 朝からタンクトップからはみ出す刺青姿で、竹刀を振るういかにもガラの悪そうな龍三(藤竜也)の元へ、息子・龍平(勝村政信)からクレームが入る。70歳になった龍三はかつて“鬼の龍三”と畏れ慕われた元ヤクザの組長だが、現在は家族にも相手にされず、社会にも居場所がなく、大企業で働く息子を頼りにしていた。息子の康介との家族旅行中、高橋家の留守を預かった龍三はオレオレ詐欺に引っかかり、元暴走族の京浜連合と因縁めいた関係になった龍三はかつてのシマを取り戻そうと、昔の仲間に召集をかける。集まったのは、若頭のマサ(近藤正臣)、はばかりのモキチ(中尾彬)、早撃ちのマック(品川徹)、ステッキのイチゾウ(樋浦勉)、五寸釘のヒデ(伊藤幸純)、カミソリのタカ(吉澤健)、神風のヤス(小野寺昭)の7人だった。上野の西郷さんの前で待ち合わせた彼らは兄弟分としての盃を交わし、「一龍会」を結成する。やがて京浜連合のチンピラたちは、調子に乗り始めたジジイたちを疎ましく思うようになり、一龍会vs.京浜連合の対立は龍三や子分の家族を巻き込み一大騒動へと発展していく。脱線に次ぐ心地良い脱線のオンパレードは、北野武の映画というよりもビートたけしのコメディ色に支えられる。その中で龍三以下7人が担うコメディ・リリーフな台詞回しが素晴らしい。

 時代遅れとなった任侠道を謳歌する7人の姿は、これまでの『BROTHER』や『アウトレイジ』のように「時代遅れ」の男たちのイメージを更に加速させる。京浜連合のリーダーである西(安田顕)の姿は『アウトレイジ』シリーズのビジネスヤクザだった石原(加瀬亮)のように、オレオレ詐欺や訪問販売など現代的な小狡いやり方で稼ぐチンピラの姿であり、そこに仁義も崇高な精神もない。現代的なチンピラと昔気質のヤクザとの対立からクライマックスにどう持って来るのかと心配していたが、ホステス・クラブで働く中尾の孫娘役で百合子(清水富美加)を起点となる役に登場させた武のセンスにはあらためて唸らされた。龍三と龍平の最後を覚悟した親子の会話から康介のアップへ、親子が継承しなかったかつての「日本のヤクザ者の滅びの美学」、黒塗りの車の中で百合子としばし佇む百合子の恋人・石垣(石塚康介)の2人並びのショットが妙な説得力を持つ。モキチの死体メイクは余りにもやり過ぎだし(中尾彬はキタノ映画に3度出て3度死ぬ 笑)、クライマックスのカー・チェイスもやや唐突なのは否めないが、キャバクラのママ役の萬田久子や、70歳になった下條アトムの7人との対比での突出した若さも妙に印象に残る。
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