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チャッピーのfumiyannのレビュー・感想・評価

チャッピー(2015年製作の映画)
3.0
『第9地区』のニール・ブロムカンプがメガホンを取ったとのことで、僕はあの作品が割りとお気に入りだったので観てみました。

“アンリアルな仮想世界に写実性をもたらす”ことに関しては、この監督はやはり頭一つ抜けていると確信しました。
そしてそのブラックユーモアを本人も楽しみながら作っていることも伝わってきます。良くも悪くも飽きさせない、といった感じ。そんな不思議な吸引力がこの監督の作品にはあります。
この作風で彼に肩を並べられる人はそんなに多くないんじゃないだろうか。

のっけから“らしさ”全開のこの作品。もし何も知らずに観ても「あ、これ第9地区の人のやつだろ」と気付くと思います(笑)
こういうのって海外でのウケがほんとに良さそう。


「ロボット警官隊が街を守る」という(今のところは)非現実的な設定が、その世界ではもう当たり前になっている。という、お得意の“写実的仮想世界”で物語は始まります。

この監督の作品の魅力は、誰が悪なのか一概に言えない所にあります。それぞれがそれぞれの立場を持っていて、それぞれの行動規範の上で行動する。他の人から見れば悪に映るが、果たしてそれは本当に悪と言えるのだろうか?
悪を悪たらしめるのは何か。倫理を持っていたとしても立場や責任が人をそうさせてしまうのか。そういうことを考えてしまいます。


途中展開が強引で粗雑過ぎるように感じることもありましたが、チャッピーの学習能力が軒並み高いということは忠実に感じられて、そこは良かったです。

ただ、今作で登場するAI、「チャッピー」は少し人工知能の枠組みを超えすぎていたかも。
感受性があまり人間に近づき過ぎるのもどうかと思いました。
ロマンに寄りすぎて逆にロマンを損ねてしまう…。
そんな感じを受けました。
無論、今作はそこが何より大きな特徴となっているのですが。
好みの問題にはなってきますが、僕としては『ターミネーター2』のT800くらいのAIっぷり(?)が1番好きです(もしくは『2001年宇宙の旅』のHAL)。あれが、人工知能としての枠組みは守りつつも、ロマンの可能性のようなものが感じられる丁度いい線引きだと思います。
浅学なのですが、もし他にAIを取り扱った良い作品があれば知りたいと思います。
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