りーちゃん

チャッピーのりーちゃんのレビュー・感想・評価

チャッピー(2015年製作の映画)
3.8

同じ監督作品「第9地区」は移民(宇宙人)をテーマにした作品だったけど、今回は人工知能。

2001年宇宙の旅、ブレードランナー、ターミネーターなど、何十年も昔から語られてきた「AI」。
人間と同じ意識をもつ彼らは、はたして本当にただのプログラムなのか?

人工知能とロボットっていうのは、SF映画を語る上でなくてはならないものだと思う。
従来の映画で描かれて来た「AI」は、人間に反旗を翻し暴走したり、自我に目覚め不安定かつ危険なものに描かれることが多かったけど、本作のAI“チャッピー”は、思考も自我もあって、人間の子供のように色々なことを学び、考えることができる。
だけど、それが仇となり、間違った方向や犯罪に手を染めてしまう。
チャッピーのピュアさと治安の悪い犯罪都市の対比が丁度よくて、ヒュー・ジャックマンには珍しく、完全に悪い奴、同情の欠片すら持たない野心家を憎たらしく演じていてそこも必見。

そして、ヨーランディとニンジャ。この2人がとにかく鮮烈な個性を放っていて、作品の魅力をより強いものとし、ヒュー・ジャックマンよりもむしろ彼らをフィーチャーしたほうが良かったのでは?と思ったほどです。
特にヨーランディは、この作品におけるヒロインの役割があると思うんだけど、作品全体とのコントラストが絶妙で、いろんな意味で異質な愛すべきキャラクターとなっていると思いました。
ヨハネスブルグの、荒廃した雰囲気の中でアジトにあるヨーランディの部屋だけポップで可愛くて、なんかそこだけファンタジー(非現実)のようにしたのかなという印象で、アジトのあちこちにあるグラフィティも、毒があるんだけどなんかカワイイ。

ヨーランディとニンジャは、ラップグループとして活躍している「ダイ・アントワード」という名前で活動している2人組だそうで、作品では彼らの音楽が効果的に使われていて良かったです。
劇中でもニンジャはアウトローな風貌がピッタリだし、ヨーランディはギャングっぽくないしゃべり方で憎めない。そしてその幼いしゃべり方のまま時折見せる母性に、がっちり心を掴まれました!

ロボット自体への愛らしさやもどかしさ、周りの人間達の愛情などの描写、序盤からラストにかけて色んなテーマを上手く映像化し、こちら側が深くも浅くも取れるような演出も流石で、現代のAI技術の向上で、映画の中で描かれるAIはどのようにかわっていくのか、とても興味深いなぁと感じました。

人物が多少無理矢理に動いてしまう後半だけど、きっちりとラストに向かって収束し、アクション等の演出も唸らせます。配役も良し。いう事なしです。

人ではない物体に人間より人間らしい動きや感情を持たせるという得意技は、第9地区を楽しめた人は今作も言わずもがな必ず楽しめると思います。
お正月に家族と観るのも、深夜に1人で見るのも、どのパターンでも楽しめる映画です。