とうふくん

チャッピーのとうふくんのレビュー・感想・評価

チャッピー(2015年製作の映画)
4.0
相変わらずブロムカンプ監督の描く南アフリカは地獄だ。職場出て2分も立たない内に車上強盗に遭うわ、イかれたギャングが警察機能を奪うわ挙げ句の果てに同僚からメタルギアみたいなマシーンで殺されそうになるのだから。こんなことってあります?

赤子のように無垢な精神を持ったチャッピーがチンピラ夫婦から教育を受けて次第に成長していく話...というほど本作は単純ではない。
チャッピーが可愛いだけに、チンピラからリンチに遭うシーン下手に対人間よりも辛かった。

ロボコップやピノキオといった過去作から連想される部分の多い作品ではあるが、陳腐なパロディではなく、引用が作品のオリジナリティを損なう訳でもない。

最初はドン引きしたチンピラカップルに段々と(ニンジャにすら)親しみが湧くのが不思議。ニンジャ(ワトキン・チューダー・ジョーンズ)は北斗の拳ならケンシロウに真っ先に殺されそうな救い難いクズだったのに、最後は少年ジャンプの主人公みたいなカッコイイ見せ場まで用意されてて笑った。

第9地区で衝撃を受け、次に観たエリジウムの微妙さに首を傾げ、期待半分不安で観たが、本作は紛れもなくブロムカンプ監督の代表作にして傑作だろうと思う。

悪役であるヒュー・ジャックマンの動機が単純過ぎるのは少々難がある。無理に分かりやすい敵を出す必要もなかったように思うが、アクションとカタルシスを生み出すためにはああいうキャラクターも必要悪か。シガニー・ウィーバーは本当に不要だと思うが、ヒューだけでは客寄せパンダには少々足らないと見たか。

アクション多めで登場人物が殆どお馬鹿さんしかいないのでなかなかそれと気付きにくいが、「生命と人間」に対するあまりに深刻なテーマの壁を何事もないかのようにひょいひょい飛び越えていく極めてロックな近未来SF。敢えて最低な場所と人間という設定上の枠内にチャッピーという無垢を配置し、受難を与えることで“人間の本質とは“何かを問うた重厚な作品だといえよう。言い過ぎか。

ラストシーンのぶっ飛び具合も他の映画にはない独特の味がある。普通の人間なら発狂物だが、幸せの形は人それぞれ...なのか?あれをハッピーエンドと取るか、恐怖を感じるかは観た人次第。