HicK

トイ・ストーリー4のHicKのレビュー・感想・評価

トイ・ストーリー4(2019年製作の映画)
4.5
《「急遽作った幸せ」を共感させる演出力》

【傑作に反し複雑な心中】
今作のウッディの決断が、というよりも制作陣の決断がいつまでも複雑に心に残る。それでも、「3」ではシリーズの年月を物語の重みとして利用し、感動を生み出していたのに対して、今作は単独で感動要素を作り出している。また、ストーリー展開で言えば、シリーズで一番見入った作品だった。ストーリーテリングが秀逸なだけにやっぱり複雑。

【演出面】
想像を超えるヴィジュアル面。冒頭の救助シーンの雨の表現に鳥肌が立ち、キャラクターの質感はもう実物を超え実際に売っていれば1体5万円の高級品に見える(笑)。そこに当たる美しいライティング。また今回は新たにポートレートのようなピント演出でおもちゃの小ささや温かみまで伝わってくる。ニューマンの音楽は過去作の楽曲を多用し世界観を繋いでくれた。終盤で使われた新曲もとても切なく感動的だった。

【ギャビーギャビー】
文句無しに大賞賛したい。今まで悲劇的な背景を持つキャラを救わずに、勧善懲悪とし大成敗を行う描写が不満だった。今作は初めて背景にあるトラウマから救い出すという展開が見れて嬉しい。しかも、『そんなにキレイには行かないけど必要としてる人はいる』という展開の仕方は余計に感動する。憎い演出。これだけで今作の評価爆上がり。号泣。

【フォーキー】
面白い。めちゃくちゃ笑った。一歩間違えればウザいキャラ。しかしナンセンスな言動と同時に「全てを吸収しようとする子供感」が出ているので愛おしく感じれた。正直言えば、命が宿される初めてのキャラなので掘り下げも期待してしまったが、ウッディの献身さを引き立てる役割として輝いていた。ちなみにナイフちゃんもツボだった(笑)。

【ウッディ】
今回のウッディは例えるなら、「エンドゲーム」のキャプテンアメリカ。序盤から自己犠牲をいとわない姿は、同じ境遇に見舞われた1作目とは真逆の行動。その1作目公開当時の子供たちは現在親になり、献身的に成長したウッディを自分たちと重ねる。上手い設定。そして当然ラストで思う。「もう充分尽くした。あとは自分の幸せを掴め!」と。

【おもちゃの目的と迷子のおもちゃ】
『おもちゃの目的』は持ち主を幸せにする事。しかし、持ち主から必要とされなくなり、その目的を果たしたくても果たせないウッディ。そう考えると、彼の選んだ道に納得もできる。また、目的を果たした事がないギャビーギャビーの結末は、旧作で描いたテーマを肯定しバランスをとれているとも感じる。そして『子供はおもちゃを無くす』という所に目をつけ、じゃあ彼らは一体どこへ行ったのか?を表した展開でもり、シリーズに相応しい。

そのように考えると自然なテーマ性で理解できるのだが、どうしても引っかかる点がある。

【キャラたちの不自然な変更】
過去シリーズと比較すると今回の結末の急激な方向転換により多数のキャラに不自然な変更が多い。なんと言っても最大の被害者はボニー。子供のリアルな残酷さだとしても、ウッディのみを標的にしたあの集中攻撃は「脚本上の都合」を感じてしまう。また、強引にキャラ変したボーピープの全てのセリフから溢れ出すグレー感。彼女は旅に出て変わったというが冒頭からすでに性格が変更されている。そしてバズは「心の声」を今作の後押しにしたいがために中身が出荷当初にリセットされてしまったかのようにスッカラカン。

これだけ過去作と切り離さないと舞台が作れなかったという証にも思ってしまう。

【おもちゃを人間として…】
「尽くす人生か個人の幸せか」「選択の自由は?」そんな問いを感じてしまうのは、おもちゃを「人間」として描いているから。そうした事で今回のように選択肢は人間並みに広がるが、「おもちゃ」という制約がなければ醍醐味は薄まる。今まで薄々感じていた「おもちゃを所有する事の罪悪感」もどんどん増していく。

現代映画の傾向として「続編、変化球、現実メタファー」の要素が多く溢れているが、今作も同様かもしれない。しかし、個人的には王道でいい、人間なんかに寄せる必要は無い、むしろおもちゃの方がよっぽど魅力的でそこが醍醐味なんだよと思ってしまう。

【個人的好みで言えば、】
やっぱり仲間たちの活躍が見たい。前作までは「皆んな居るだけで楽しい」、今作は「皆んな居なくてもいい」状態に。リックルズ氏の死去や今回の物語に出る幕が無いのも分かるが、少なくともラストシーンではもう少しゆっくり一人一人との別れを見たかった。じっくり描いたアンディとの別れと比べ、それ以上一緒に過ごした仲間達のはずだが淡白すぎる。あと、ダッキーとバニーはボニーに遊んでもらうのを楽しみにしてたんじゃ?という疑問も残る。

【総括】
ただそれでも賛否に分かれ討論出来るのは双方を否定しないストーリーテリングの質の高さがあるから。過去作と切り離せば、今作は結末から逆算し尽くされた展開で、ゴールへ一直線な素晴らしい作品。また、普通はテーマ性が深くなるほど、子供への目配せが邪魔に感じるのだが、素晴らしく融合されている。さらに先述した通り、積み重ねてきたものを感動要因にした前作とは違い、今作は単独で種をまき、1作品の中で感動を提供。とても秀逸な映画という事は間違いない。