トイ・ストーリーって、本当に毎回毎回、サラッとすごいテーマを描いてきますよね。おもちゃの世界を描きつつ、ちゃんと人間社会に置き換えられる。
トイ・ストーリーを観ると、童心にかえりながら大切なことを思い出したり、胸がチクチクしたり、物語の裏にあるさまざまな暗喩に心を揺さぶられる。
【ここから先、内容にふれます】
“おもちゃにとって大切なことは子供のそばにいること”
これがいわゆるおもちゃ界での「幸せのカタチ」みたいになっていて、今までのトイ・ストーリーでも、それが描かれてきました。
この「幸せのカタチ」は人間社会でいうところの、大企業に勤めて、結婚して子供が二人いて、素敵なマイホームを建てて……みたいな感じでしょうか。
そこからはずれる人にとっては、目に見えない灰色の糸でグルグル巻きにされているような感覚。
……どうせ私は……と。
だから、子供たちに選んでもらえないおもちゃは自分に自信がなくて、持ち主のいないおもちゃはかわいそうと思っている。
ゴミ箱に捨てられていた先割れスプーンやモールで作られたフォーキーが、「ボクはゴミだ!」と言いながら何度もゴミ箱に入ろうとするシーンは、なんだか自己肯定感が低い自分と重なり、胸がチクチクしました。
それにしても、隙あらば何度も何度もゴミ箱に入ろうとするので、途中からちょっとイライラしちゃいましたけど😅
冒険の舞台になるのは、カラフルな移動遊園地と、ちょっとダークなアンティークショップ。まるで実写のようになめらかで美しく情感豊かな映像に驚愕。
さまざまな素材でできているおもちゃたちの質感もスゴイ。
とくにアンティークショップは最高にワクワクしました。
キモこわい腹話術人形の動きがとにかくホラー😱
それから、ギャビー・ギャビーのことを最初は「アナベル人形みたいで怖っ!」って思ってゴメンなさい。怖さの裏には、寂しさや悲しみがあるんですよね。報われて良かった。
トイ・ストーリーで毎回楽しいのは、人間に見つからないように行動する「だるまさんがころんだ」的なハラハラ。
アンティークショップでいろんなアイテムを駆使しながらの、人間VSおもちゃVSおもちゃのアクションが抜群におもしろかったです。
チョコプラの吹き替えも楽しかった😆
今までのトイ・ストーリーを大切にしつつ、すべてをひっくり返すような意外なラスト。ウッディの決断に驚き、そしてその勇気に拍手を送りたい。無限の彼方へ飛び出した彼を、その決断を受け止めて背中を押したバズたちを、私は全力で応援する。
そして、新しい運命を切り開き、自分の足で生きるボー・ピープのカッコよさ! ちょっとくらい腕がもげたってヘッチャラなのさ。彼女はとてもキラキラ輝いていて、たくましく見えました。
これは、おもちゃたちの「働き方改革」「多様性」。
いろんな場所で生きるおもちゃがいて、それぞれに違った役割がある。
誰にだって居場所はちゃんとある。
「幸せのカタチ」という固定観念にとらわれすぎて自分を卑下しないで。そんな温かさに包まれます。
どちらが迷子で、どちらが幸せなのか。
それは他人(他おもちゃ)が決めることではないし、「こうであるべき」と押し付けるものでもない。
自分の役割を見つけて、自分が楽しいと思うほう、ワクワクするほうを選べばいい。
とにかく「さすがディズニー」。もうこれしかない。映画を観ながら何度「さすがディズニー」と唸ったことか。悔しいけど「さすがディズニー」そして「さすがピクサー」。
完璧である。お手上げである。もはや何も言いますまい。
【追記】
皆さんのレビューを読んで感じたのですが、このストーリーは、人生の中でさまざまな別れや変化、自分の力じゃどうにもならないことの悔しさなどを経験してきた中年以降の世代に特に響くのかな、と……。
親離れ、子離れの話なのかな。
ウッディは、親でもあり、子のような存在でもあるんだなぁと思いました。
ウッディとバズ、ウッディとアンディ、そしておもちゃたち。彼らの気持ちは離れていてもつながっていると思います。
そしてウッディとボーが再会したように、いつかまたバズやアンディとも再会できる。
賛否が分かれるのは、それだけ皆んながトイ・ストーリーの世界が大好きで、それぞれのトイ・ストーリーがあるってことですね。
心にポコポコと穴が空いている私のような人間には、かなり刺さるストーリーでした。
あと、復習して1から観たら、他のおもちゃはそんなに変わらないけど、ボーの質感が違いすぎてもはや別人🤣 この20年のCG技術の発達スゴイ。っていうか、逆に陶器感なくなってるような😅