RIO

トイ・ストーリー4のRIOのネタバレレビュー・内容・結末

トイ・ストーリー4(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

えっと…正直すごく戸惑っていて、評価も定まらないのですが…。
公開後、そのストーリーについて賛否両論が巻き起こっているとは耳にしていましたが、まさか自分自身の中でも巻き起こってしまうなんて。どちらかの意見には落ち着くと思い楽しみにしていただけに、混乱というのが一番大きな今の感情です。そして、なんだか終始怖かったのです。
かなり不満が溢れるレビューになってしまうので、気分を害されそうな方はすみません。

もちろん良い点もたくさんあり、過去作を再鑑賞したばかりなので余計、映像が圧倒的進化を遂げている点は本当に素晴らしかったです。おもちゃの質感、自然美、光の表現はため息もの。CGアニメーションの最高峰であるピクサーの真髄を味わえました。
いつも通り吹き替えで鑑賞したのですが、お馴染みのメンバーはもちろん新キャストも皆さんお上手でびっくりしました。吹き替え声優へのタレント乱用にはあまりいい気はしない派ですが、割と好きな竜星涼はこんなキャラ声でコミカルな演技できるんだと感心、新木優子も違和感のない演技と澄んだ綺麗な声で驚きました。チョコプラのお二人もコメディ色全開のキャラにピッタリだし、特に松尾は声優かと思うくらいの声色でしたね。
新キャラも個性豊かで、ダッキー&バニーがめちゃくちゃ可愛かったです。もふもふしたい!過去作にも馴染みそうなデューク・カブーンも噂に違わぬ面白さで、キアヌの声で聞いてみたさが増しました笑
あと一番泣いたのがオープニングの巧みな映像。あれはファンには感涙ものの演出でしたね。

しかし、疑問符が浮かびっぱなしなのはストーリーや結末です。
メインテーマの一つでもあろう「固定観念や責務からの解放」はよく伝わってきましたし、「みんなが幸せになれる道」として報復もなければ様々なおもちゃへの救済の拡大も描かれたこと、もちろん納得はできます。
しかし、3のラストでアンディが愛を持って素晴らしい紹介をしたように、おもちゃは捨てられない限り永久的な命を持て、それが子どもに受け継がれたり世代も超えた他人同士を繋いだりして、歴史を作っていく一つになりうる存在だと思うのです。そして、きっとそれを出来たはずのウッディの結末がこんな風だなんて…。
アンディもウッディも、思うことは違えどそれぞれ決断をしてボニーの元へ渡ったのに、ウッディ自身が"持ち主への愛"も貫かず"仲間と共にいること"も捨ててしまうなら、本当に3のエンディングや今までのウッディの性格は何だったの?と言わざるをえなくないですか…?ボーとの再会や外の世界との出会いで新たな決断をしたのはわかりますが、それならもっと徹底的に納得できる道筋にして欲しかったというか、率直に言うと雑に見えてしまいました。ウッディの正義感に対する個人的な解釈違いなのかなぁ。
ボニーが新・アンディにはならなかったのもショック。アンディは、最高の友達で父親のようでもあったウッディを最後まで悩んだ末に「大切にしてね」と念押ししてボニーに手渡したのに、いくら子どもであれ貰ってすぐなのに、なくなったことすら気づかないなんてあまりに残酷すぎませんか?ボーがアンディ家を去る冒頭のシーンでアンディがウッディをすぐに探し回っていた描写も、そんな気持ちをより増長させ、製作者の意図を汲み取るのが困難でした。主人公の子どもをよく思われない不可解な行動に出したこと、アンディの審美眼が間違っていたかのようにも取れるし、ストーリーに沿わせるための浅い理由での改変や子どもの習性に沿ったリアルなんてことではないのを信じたいです。そして何より、予測のつかない子どもとは違う、分別あるはずのボニーの両親にすごくモヤモヤさせられました。特にお父さん、ウッディの顔踏むなんて冗談でも笑えないでしょう。全部込み込みで、こんなのアンディが見たら悲しむと思います。
また、おもちゃとしての使命を現役で全うすることを決意しながら共に仲間といることを選んだウッディが、いくら新しい使命や救うべきおもちゃを見つけたからと言ってあの決断をするのは、すぐに受け入れられるものではないです。ボーとの恋模様も仲間内の一関係として素敵だったのに、相棒バズをはじめとするお馴染みの仲間達を差し置くほどの存在ではなかったはず。フォーキーの台頭やボニーの態度を鑑みると、なんだか半ばヤケのような展開にも思えてしまうのもなぁ…。何より強い絆で結ばれていた相棒・バズとの関係性もかなり希薄に映ってしまったのも本当に悲しかったです。シリーズ物ならではのお馴染みキャラ達の活躍をもっと堪能したかったな。
それに、ボーは2まで一番の推しキャラクターだっただけに、今回のキャラ変も納得はいきません。既に散々意見があるので多くは語りませんが...。女性が性別にとらわれず活躍できる新時代の到来は大賛成ですが、権利を与えるのと義務を課すのは違うはず。お淑やかで愛する男性を信じつつも積極的で自分を持っているレディなボーが好きだったのに、いくら世界を知ったからと言ってワンマンになりすぎでは…。しかも散々自立を掲げておいて結局男女の恋愛に落ち着くんかい、とも思ってしまいました。ウッディとボーのカップルは大好きでしたけどね。また、ボーのアクション的活躍のためにウッディを情けない描写ばかりにしたのも残念。平等を謳うなら一緒に活躍できないのかな。それに、陶器人形ならではのぎこちない動きや表情が可愛かったのに、あんなに軽やかに動かれ子どもっぽい豊かな表情になるともはや視覚的には別物にも見えてしまいました...。
最近のディズニーは何でもかんでも男勝りでアクティブなヒロインにしてしまうのが少し違和感で、旧時代的で大人しく淑やかな女性の性格に憧れる人は、今後どんどん社会から排除されていくのでしょうか。多様性ってなんだろう…。
多様性といえば、新キャラで大切な役目も担ったギャビーギャビーにも思うところはたくさんありました。そのやりとりすら雑で戸惑いましたが、ウッディのボイスボックスを引き継ぐことで前作までの"おもちゃ"としての彼のあり方を別の形で生かすようにも感じられながらも、欠陥を持つ彼女がありのまま愛されるルートもあったはずではと疑問でした。現に彼女も固定観念から解放されて救われた一人。ここまでおもちゃ界を人間社会になぞらえて多様性を提示する上でなら、正解からは程遠い結末に思えました。

もちろん、大好きなキャラクター達の決断に異議を唱えたくないものですが、なんだか遣る瀬無さでいっぱいです。
加えてまとまりのない、批判的な文章ですみません。
こんなことを言っていても、後々自分の中で今はバラバラのピースが合わさって腑に落ちるかもしれないし、続編があるならそれを観てからじゃないと何とも言えないところはありますが、現時点でも活かしきれなかったり詰めの甘い設定が目立つのは気になるところ。大胆な結末にするなら、ファンを納得させられるだけの巧みな伏線や丁寧な描写が何より必須では無いでしょうか?
これが本当にラストなら悲しいですが、今後どんな展開になろうと蛇足パートになりそうな気も。また、人間とおもちゃの関係を描いてきた前作と比べると、おもちゃにもかなり人間社会的な問題も織り込まれている印象。共感性やメッセージ性が高いのは胸を揺さぶる点でしたが、そこを同一視するのは違うんじゃない?と思ってしまったのも正直な感想。今回の決断が大きな伏線となり、また素晴らしいウッディと仲間達の冒険が見れることを祈るほかありません。

ジョン・ラセター版に固執したくはありませんが、やはり作品の温度感自体もかなり変わってしまったように思います。脚本が大幅に書き換えられたことも聞いてしまうと、タラレバは尽きません。
テンポよくギャグ盛り盛りなのは笑えましたけどね。
皆さんの意見もかなり気になる作品です。
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