映画ネズミ

ダム・キーパーの映画ネズミのレビュー・感想・評価

ダム・キーパー(2013年製作の映画)
4.2
向いている人:①アニメが好きな人
       ②キツイお話でも大丈夫な人
       ③マジメでけなげな主人公のお話が好きな人

 Youtubeで期間限定配信されていて、フォロワーの皆様の評判も良かったので、見てみました。初めてのショートフィルムです。

 主人公ピッグは、ダムの上に建っている風車を回して、「暗闇」から街を守る仕事。しかし、仕事のせいでいつも汚れているピッグは、学校では友達もおらず、みんなにいじめられていた。そこに、絵を描くのが好きなキツネがやってきて……。

 『トイ・ストーリー3』や『モンスターズ・ユニバーシティ』のアートディレクターを務めた日本人が初めて監督を務めて、アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた本作。

 まず、絵本調の絵のタッチが、とても可愛らしいです。主人公ピッグもかわいいです。

 ストーリーですが、可哀そうなお話です。

 特に、前半のイジメ描写が、本当にキツイです。

 主人公は、バスに乗れば物を投げつけられるし、学校では荷物をトイレでぶちまけられるし、いつもひとりで、話しかけてくれる人もいません。

 この、絶対的な孤独。誰にも理解されない孤独。

 周囲の人間は、「ただ面白いから」というだけで、彼のことをいじめています。彼が、どんな人か、想像もせず。

 イジメってよくない! と言う映画やドラマはたくさんあります。でも、その本質に向き合った作品は中々ありません。「誰もが心に闇を抱えて……その犠牲者が……」的な作品すらあります。

 私も、イジメって何なのか、分かったようなことを言うつもりはないですが、ひとつの原因は、「想像力がないこと」だと思います。

 面白いから、ウケるから、本人がイヤと言わないから、あれをやる、これをやる、あれをさせる、これをさせる。テレビで見たから、ゲームで見たから、漫画で読んだから、そういうノリだから、そういう空気だから、という言い訳を積み重ねて。

 そこには、「相手の人格」に対する想像力がないんです。「やられる側の気持ち」の想像力がないんです。結局、相手のことを「個性のある人間」として見ていないんですよね。自分たちか、彼らかという単純な思考に陥りがち、というか。

 「これをされたら、相手はどう思うか」を想像することは、簡単なはずなんです。「自分がされたらどう思うか」を考えればいいのですから。

 でも、意外と、できない。

 そこで諦めちゃダメなんですよね。誰しも、人と関わって生きていく以上は、常に向き合っていかなきゃいけない。

 「自分に正直でいること」「はっきりものを言うこと」が過剰にもてはやされている最近。もちろん、自分に正直でいることは大切です。が、他人に誠実であることも、それ以上に大切だな、と痛感させられた作品でした。

 ラスト。主人公は、自分の居場所を見つけることができるのか。悲しく、寂しい話ですが、ささやかな、でも温かいラストが待っています。

 『すみっコぐらし』に続き、アニメ作品でまたやられてしまいました。
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