みしま

二重生活のみしまのネタバレレビュー・内容・結末

二重生活(2012年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ずっと観たかったロウ・イエの二重生活。
男児が大事にされることや日本でも稀に見るマザコン男、少しだけ中国の文化や価値観を感じた。ワードとしてしか耳にしたことがなかったから、少し調べてみた。
2016年までの30年間、中国では一人っ子政策が施行されていた。食糧危機を避けることが理由とのこと。男尊女卑傾向が日本よりも強い中国では、第一子に女児が生まれると殺したり売ったりといったこともあったらしいが、確かにそういう映画やドキュメンタリーを見たことがある。そして、二人目が生まれた場合は罰金が課せられるため、行政に届け出をせずにいる戸籍のない子供、いわゆるヘイハイツが数億人いるとも言われている。それでも、中国では子供を育てるのに収入の大部分を要するため、一人っ子政策が撤廃されたところで出生率は日本より低い。貧困家庭がさらに増えることが現在の問題で、中国政府は出産を推奨しているとのこと。教育環境が整っていない中では、難しいのではないかと思うが。
そういった背景がある中で、この映画は作られた。ヨンチャオがサチリアージスであることもあるが、子供を一人しか持てない、男児が重宝される、といった風潮に縛られた生活があり、それに反する気持ちゆえの衝動や欲求みたいなものもがあるのかもしれない。そして当然、それを強く感じざるを得ないのは女性側であって、その風潮によって彼女たちは傷つき、さらに立場を弱くさせられているのが伝わってきた。
ルージエもサンチーも、どちらもヨンチャオを愛していて、その子供を大切に育てたいだけだ。いつから彼女たちが同じ夫(という立場)だと気がついたのかは考察の余地はあるが、お互いがそれを認知してからの攻防は凄かった。子供、夫、家庭、今の生活を守らなければならないという妻の強さを感じた。そして、両方を選ぶという選択肢はないこと、ヨンチャオを嫌いになるということもまたないということ。簡潔に言ってしまえば同じ幼稚園の中での夫の共有であるが、描き方が良くてそういった気持ち悪さを感じることはなかった。不思議である。むしろどこかヨンチャオに同情してしまいそうになるなど。
個人的には不要なものが何もないように感じるハオレイの顔は本当に好き、日本人でいう池脇千鶴的な。喜怒哀楽のうち怒と哀ばかりの内容ではあり対照的ではあるが、度々色気を感じた。最後も、ハオレイが子供と二人で生きていく結末も好きだった。
みしま

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