くわまんG

PKのくわまんGのレビュー・感想・評価

PK(2014年製作の映画)
4.0
ファンタジーと同様に、コメディにはリアリティの水準が必要ないので、道筋がはっきりしていればその高い自由度でもって、ナイーブなテーマに最も深くアプローチすることができる手法ですよね。踏み込んだこと言って目くじら立てられても、「だってファンタジーですよ?」「いや、コメディですし笑」と言えちゃうわけですから。『神様メール』同様、これも宗教や信仰に大胆に迫った、かなり完成度の高いコメディでした。

みどころ:
宇宙人的“ココが変だよ地球人”
宗教屋と無知な人への痛烈批判
A.カーンの徹底的な役作り
正しい祈り方をレクチャー
気の持ちように触れてない

あらすじ:
ベルギー在住のインド人女子大生ジャグーは、運命的に出会ったサルファラーズと恋に落ち、一気にゴールインを考えるように。しかし彼はパキスタン人、案の定宗教上の理由から親は猛反対。ジャグーはこれを押し切って式を敢行するが、当日チャペルに来たのは彼ではなく、「さようなら。もう連絡しないで。」という手紙。
吹っ切れてインドへ舞い戻るも、親からは勘当同然。記者として一人暮らしを始めたが、扱うネタはカスばかり。ほとほと嫌気がさしていた。
そんなおり、街頭で奇妙なビラを配る男が目にとまる。なんとそのビラには「尋ね人:神様」とあった。「こりゃネタだぞ♪」と取材を試みたジャグーだったが……。

かつて、特に科学が未熟だった頃には、宗教がひとに与える影響は絶大でしたよね。それはたくさんの奇跡も起こしてきましたが、残念ながら支配や戦争の道具として悪用されてきた史実の方が広く認知されています。徳のある善意より、得になる悪意の方が“わかる話”なんですね。

ところが、損得勘定の無い宇宙人にはこれがわかりません。「地球に降り立ってからジャグーに出会うまで悪意にしか出会わなかった」という経緯に始まり、地球人の“お恥ずかしい”ところが次々にあらわとなってゆき、物語は滑稽な訪問者を見て笑っていた観客に、徐々に襟を正すよう誘導します。「おいおいこの地球人ってシャレになってない悪党だな。あ、俺たちか…。」てな具合に。

ただ、この辺があまりに面白おかしく巧く描かれているので、娯楽的には成功して(あっという間に時間が過ぎ)ますが、違和感が少なすぎて若干心に残りにくいかもしれませんね。特に宗教と馴染みの薄い日本人にとっては、他人事のように感じられかねないでしょう。この点は『神様メール』でも同様でした(あちらは最後にダメ押しのごとく直喩を詰め込んでましたが…笑)が、その分最大公約数的な効果は得られているので、コメディのジレンマなのかもしれませんね。

シーア派とは言えインドではマイノリティであるアーミル・カーンが、『きっと、うまくいく』と同じタッグで同じく“信条”について触れた渾身作。ニコニコの喜劇の中にアツアツの情熱がこもっていて、ヌクヌクになれる一本でした。