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ナイトクローラーのfumiyannのレビュー・感想・評価

ナイトクローラー(2014年製作の映画)
4.5

僕の好きな映画の傾向がいくつかあって、
①“惹き込ませる力”のある映画。
②人の醜い部分も全て含めて描ききっている映画。
③夜が感じられる映画。

つまりこの『ナイトクローラー』、とっても好みでした(笑)
特に映画が持つあらゆる要素の中でこの“惹き込ませる力”があるか無いかというのが、自分の中では結構ポイントです。

例えプロットがイマイチうまく出来ていなくても、何が伝えたいのかよく分からなくても、視聴者を前のめりにさせ、ラストまで引っ張っていく力があればそれは十二分に魅力的な映画だと言えるんじゃないかなあ、と常々思います。

この映画はまさにその力を持っている映画の1つであると言える。


個人的に特に感心したのは2点。

I.【対位法的演出と後半の作り分け】
つまり音楽の使い方を含めて、恐ろしい場面で敢えて、強がるようにその恐ろしさを隠そうとする。
今見えている光景に「オーケー、大丈夫。これはなんて事ないんだ。」と自分に(視聴者に)言い聞かすかのような場面が所々に見られた。キューブリック的と言うほど顕著ではないにしろ、この見せ方はのっぴきならない狂気を感じられて好きです。
そして後半からの大部分は作り手が両手をあげてこの作品が狂気に入り込んでいることをようやく認めたかのようにに恐怖・緊迫感を助長する作りに切り替わります。
主人公が、どんなに引き返せない場所にいるのか、自分自身気づかずにいるということがこの作り分けでうまく描けているなあと思いました。

II.【ジェイク・ギレンホールの怪演】
言わずもがな、という感じかもしれませんが。
彼は今作に当たって随分減量したみたいで。人ってあんなに目を見開けるんだなと感心しました。
ストーリーを全て蹴散らす程の顔面の強さがあります(笑)
あんまりネタバレなので書けませんが、特に終盤のあるシーン。撮影への専心の表情には本当にゾッとするものを感じた。


終盤のジェットコースターでは「一体どうなるんだろう…」と気になる自分がいる反面、「もうここまで楽しめたんだから、どうなったっていいや」と思っている自分もいました。
もちろん前向きな意味で。
そんなことまで思える映画ってあんまりいっぱいあるわけじゃないです。

結局は、結末まで見事でしたが。
今まで他に見たことがないタイプの終わり方だった。
“戦慄のハッピーエンド”という公式での文句にも頷ける。

それにしてもなんで赤い車なんか選んだんだろう…??
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