Jin

ナイトクローラーのJinのレビュー・感想・評価

ナイトクローラー(2014年製作の映画)
3.9
“恐怖とはなんだと思う?”
“「本物に見える偽の証拠」”


職も金もない男が、ニュース素材屋として狂気の取材で成り上がっていく物語。

サクセスストーリーなのにホラー要素が入った珍しい映画だった。

ジェイクギレンホールが素晴らしい。「ブロークバックマウンテン」でもそうだったけど、眼が雄弁。
狂気と興奮と残酷性を眼だけで演技する凄みがあった。表情アップのシーンが多いのも効果的。

職も金もなくて盗みを働いていた「人でなし」の主人公だから、ダメ男なのかと思ったら、それがまさかの「超ビジネスパーソン」。自己分析と向学心が異常。その設定が面白い。
なぜ就職できないのかというと、たぶん非道すぎるからなのかな。それが滲み出てる。

自分が撮影した映像が絶賛され、放送されて、金になる。
自己肯定感が一気に高まり、その快感は中毒へ。


この映画の薄気味悪さは現代社会の3つの要素を指摘してるのかもしれない。

1つは、モラルを失った超ビジネスパーソンで超プロフェッショナルな人間が勝ち上がる世界。偽装してまでも利益を求める貪欲さと残虐性が勝利につながる。

2つ目は、刺激を求めすぎる世界。
残酷で物語性をもった映像を求めすぎる視聴者とそれを満たそうとするメディア。それが「現実か」よりも「過激か」が重要視される。
“テレビで観るとリアルだ”
っていうセリフは刺さる。

そして3つ目が、SNSに溺れる世界。
画面を通すと現実味が薄れ、撮影者は賞賛を求めてさらに過激な撮影を行う。ゲーム感覚で過剰になっていくそれはまるで、麻薬のようだ。


一見明るいシーンも、不自然な表情のカットや不穏な音楽で、気味の悪さを増幅させていた。
セリフも深くて刺さる。

主人公を真っ向から否定できない後味の悪さが際立ったいい物語だった。
Jin

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