GodSpeed楓

ナイトクローラーのGodSpeed楓のレビュー・感想・評価

ナイトクローラー(2014年製作の映画)
4.0
とにかく本作の凄い部分はギレンホールの演技・表情が真っ先に挙がるだろう。「ドニー・ダーコ」や「ゾディアック」の頃は、ちょっと内気でオタクな好青年という印象が強かったのだが、今作のギレンホールの狂気に満ちた表情は物凄かった。元からギョロ目ではあるのだが、今作では凄く強調されている。「ケーブルガイ」の時みたいな怖いジム・キャリーって感じ。しかも性格が完全なクソ野郎で、ネットで得た知識を声高に語り、人の話は聞かず遮り、自分の主張を押し通す強引な交渉術。もう目も当てられない。しかし、ギレンホール史に残る最高の笑顔を見せてくれるのは間違いなく本作だろう。(目はキマってしまっているが)

大嘘ぶっこきながら相棒を雇い、よりショッキングな映像を作り出すために死体を動かしたり、強盗殺人のあった現場に警察より先に乗り込んで撮影したり、とにかくレアな映像を撮ろうとする姿勢…。

まさに報道の鑑!(クズ)

ライバル企業の車に細工して事故らせたり、情報を隠ぺいしたりやりたり放題。しかし、ちょいちょい流れるBGMが、爽やかなアンビエントなのが鼻について面白い。すごく、ヒューマン・ドラマ臭いというか、「サクセス・ストーリー感」が溢れ出てるBGMなのだ。なんでこんなゴキブリ野郎の動向に素敵BGMが使われるのか…狙ってやってる皮肉にしか思えない。

でも、世の中で報道されている映像だって、こうやって作られたりしてる事もあるのだろう。以前、大したことない台風だったけど、レポーターがしゃがんで「凄い風です!立てません!」みたいな映像の後にカメラが切れてなくて普通に立って歩くシーンが流れちゃってる映像を見た事あるし、報道ってのはセンセーショナルな方が皆が喜ぶものだからだ。やはりTVに映ってるものは殆ど虚構なのだろう。

しかし「ビデオカメラ」がメイン武器というだけあってカメラ越しのシーンが結構あるのだが、それらのシーンはPOVのような映像のためドキュメンタリー感があって緊張感が増している。これが非常に良かった。こういう一緒にニュース番組を見てるかのような、視聴者の1人として追体験できるPOVの使い方は見事。

まとめると、とにかくゲスなゴキブリ野郎のサクセス・ストーリー。どんどん調子ぶっこいて無茶苦茶な事をするわ言うわで跳梁跋扈するギレンホールの姿を「いやいや、何言ってんのコイツ?」と半笑いしながらも目が離せなくなる不思議な映画。

やはり僕も、センセーショナルな映像には虜になってしまう、愚衆の1人に違いないんだろう。
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