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とうもろこしの島のmaverickのレビュー・感想・評価

とうもろこしの島(2014年製作の映画)
3.7
2014年のジョージア・チェコ・フランス・ドイツ・カザフスタン・ハンガリー合作映画。原題は『コーン・アイランド』。


1990年代初頭、ジョージアとそこからの独立を主張するアブハジアとが川を挟んで戦闘を続けていた。その真ん中にある小さな中州に老人は小屋を建て、とうもろこしを栽培し始める。戦争で両親を失った孫娘も連れて。

ほぼほぼ台詞のない静かな作品。戦闘のさなかでも淡々と変わらぬ生活を続ける老人と少女を描き、その対比が印象的な物語である。ただ自分にはこの作品は刺さらなかった。

中洲に小屋を建てるお爺さん。まずこの時点で「そんなところに家を建てるなんて無茶な」と突っ込まざるを得ない。水かさが増したらどうするんだと、そういうことが気になって仕方なかった。ちょっと波が押し寄せるだけでそれを感じさせるし。中洲じゃなくて小さな島なら良かったなぁ。

自然の美しさが戦争との対比にはなっている。でもお爺さんと孫娘との生活の中にそれを強く感じなかった。それよりも気になったのは少女の無邪気さである。ちょうど子供から大人へと脱却する年頃。彼女の性への目覚めも描いている。唐突にそれが表現されたシーンが出てきて、これにはびっくり。この少女の性への目覚めを盛り込んだ意図がよく分からない。外国映画特有の生々しさもあってちょっと面食らってしまった。冷たい川に入水するシーンもあり、撮影は少女にとって過酷な面もあったらしい。演技経験のない女の子らしく、それが初々しさを表現出来ていたことは良いが、脱ぐことは大丈夫だったのかなと疑問は感じたな。

お爺さんと少女、そしてそこに現れる男と、その構図がつい先日鑑賞したキム・ギドク監督の『弓』と似ていた。もちろん作品性や内容はだいぶ違うが、その方向性の違いを楽しむという見方が出来て面白かった。


ラストのシーンもCGではないらしく、そうした努力と熱意には感嘆する。お爺さんの演技、少女の自然な雰囲気もとても良かった。淡々としすぎて自分には合わなかったが、芸術性はとても感じた。
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