カツマ

とうもろこしの島のカツマのレビュー・感想・評価

とうもろこしの島(2014年製作の映画)
3.8
沈黙は雄弁に語る。語らないことが逆説的に強烈なメッセージ性を放つ異様な余韻を残す作品。ほとんどセリフはなく、画面は静寂と大自然の躍動に溢れる。そう、例え戦火の中にあっても、淡々と日々は続いていく。

舞台は1990年代にグルジアで勃発したアブハジア紛争地帯。両軍の往来も激しい危険地帯の小島に老人と孫は小屋を建てた。そこでとうもろこしを栽培するために。時に銃声が鳴り響き、両軍の兵士達から奇異の目で見られる中、祖父と孫は戦争という大陸から離れた小島となって独立した物語を紡いでいく。そこに立つ一片のさざ波。負傷した兵士が島に打ち上げられ、老人はただ無言のままに彼を匿うことにする。

サインはとても小さいが、孫娘の感情の変化のスイッチは確実に押されていき、彼女の成長はそのまま人生の縮図となって観るものに訴えかけてくる。序盤は反戦の話かと思ったが、実はもっと生活に根ざした物語。季節は巡り、何かが壊れ、また根付いていく。
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