砂

とうもろこしの島の砂のレビュー・感想・評価

とうもろこしの島(2014年製作の映画)
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ジョージアは大国に翻弄される度重なる歴史と、それでも自国を守ろうとし続けた人々、そしてワインの国だ。
本作はそれらを踏まえたうえでの鑑賞は観方が変わる。

紛争ラインである川の中州にできた小さな島で、自給自足の生活ととうもろこしの耕作を黙々と営む老人と孫娘。ある日、ケガをしたジョージア側の兵士がとうもろこし畑で発見される。何も言わず介抱する間にも、敵国側の兵士たちはボートで彼を捜索している…

というのがストーリーの中で目立つ点。これ自体も重要なのだが、あくまで部分でありヒューマンドラマ的に重点を置くのは少しポイントがずれる気はする。その前後も含めた全体で意味を構成しているものであるため。

登場人物やセリフ、舞台が最小限であり、抑制された演出も一役買って非常に寡黙な作品だ。水、火、風、光、音が際立って極めて抒情的である。
先述のように大まかな起伏はあるものの、物語自体は寓話と捉えるほうがよい。端的に言えば、島そのものが複雑なジョージアの歴史を表していると考えたほうが自然だろう。
それを踏まえると、介抱した兵士が異なる言語の人であり少女と会話ができないということがさらに複雑さに拍車をかける。

「かつて、島に住んでいた人が残したありきたりな何か」を見つけることで始まるカットでは、脈々と続く再建の歴史と併せて、背反する悲しみと力強さを感じた。
映像詩としてもすばらしい出来なので、好みが合いそうな人には勧めたい。
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