夜な夜な映画祭

ボーダレス ぼくの船の国境線/ゼロ地帯の子どもたちの夜な夜な映画祭のレビュー・感想・評価

3.9
痛烈に心に残る。

この映画の中で戦場の悲惨さは、極めて静かなトーンで描写される。

戦争により人生を奪われた少年と少女と、兵士。国境のない廃船上で、必死に生にしがみつく。

少年は場面によってあどけなくも見えるし、大人のような精悍な顔付きをしたりする。

私はこの表情の変化に気付く度に、胸が痛んだ。悲しみを乗り越えるために、少年はただ少年であることさえ許されず、必死にしがみついた生への突起が崩れかける度に、次の突起へと手をかける。

この映画は、廃船上の歪な共同生活の風景に、深々と悲しみが沈殿していく様を記録する。

そんな悲痛な風景において、ラスト一瞬のシーンの、なんて美しいことか。廃船上の風景にたった一層だけ刻まれた、これは奇跡の記録に違いない。