痛烈に心に残る。
この映画の中で戦場の悲惨さは、極めて静かなトーンで描写される。
戦争により人生を奪われた少年と少女と、兵士。国境のない廃船上で、必死に生にしがみつく。
少年は場面によってあどけなくも見えるし、大人のような精悍な顔付きをしたりする。
私はこの表情の変化に気付く度に、胸が痛んだ。悲しみを乗り越えるために、少年はただ少年であることさえ許されず、必死にしがみついた生への突起が崩れかける度に、次の突起へと手をかける。
この映画は、廃船上の歪な共同生活の風景に、深々と悲しみが沈殿していく様を記録する。
そんな悲痛な風景において、ラスト一瞬のシーンの、なんて美しいことか。廃船上の風景にたった一層だけ刻まれた、これは奇跡の記録に違いない。