うめ

ボーダレス ぼくの船の国境線/ゼロ地帯の子どもたちのうめのレビュー・感想・評価

4.0
国境ギリギリの廃船に住む一人の少年。
逞しく暮らす毎日だったが、そこに少年兵が現れる。
言葉も通じない、それでも徐々に何かが通じ合っていく。

静かに穏やかに流れていくようにみえる時間。
しかし、耳をすませば感じる。
銃声、異国の言葉、爆発する振動…
小さな自分だけの世界に閉じこもっていても、そこから逃れる事はできない。
彼が見上げる空も、僕が見上げる空も同じ空なのに…
そこは血と炎に包まれている。
誰もが傷つけ傷つけられていく。
そこにもボーダーなんかはない。

そんな彼の日常に訪れる変化が、さざ波のように彼の世界を揺らし始める。
恐れ…安らぎ…段々と大きく激しく揺れる心。

みんな同じ人間。
そこには、ボーダーなんてないはずなのに。
区別され、細分化されていく世界。
イランで、この作品が作られた事に大きな意味がある。
味わって欲しいので、ストーリーについては触れません。

戦争の悲惨さを声高に叫ぶのではない。
静かに、でも確かな声で彼等は囁くのだ。
「もう嫌だ」と…
うめ

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