しゆ

ワイルド・スピード SKY MISSIONのしゆのレビュー・感想・評価

4.6
観放題対象終了までにギリギリ間に合った。結論から言えばワイスピ史上最高の仕上がりでした。たまたまストリーミングで1から遡ってきたけど全部観てよかった。だからこその感動がある。
公開から9年の間があるのにトーキョードリフトとうまく整合性を持たせていたのがまず高評価。ハンを掘り下げたあとの葬式は喪失感とともにドミニクとショウ双方への怒り憎しみを動機付けるには十分な描写だった。
車ごとスカイダイビングする規格外の作戦、高層ビルでの潜入、ドローンを相手にした華麗なドライブテクニックは手に汗握る展開で単発の作品としても完成度が高いのはもちろんのこと、13年に渡って主人公ブライアンを務めたポール・ウォーカーの遺作としても注目したい。「君のサンドを食べたときから結ばれてた」「古い手さ」の車高を下げてトレーラーの下をくぐり抜けるのはセルフオマージュになっていてこの時点では粋な演出だとしか思ってなかったけど、生前の時点で脚本に書かれていたのが偶然にも彼の生きていたワイスピシリーズを振り返るようで奇妙な運命を感じる。
彼が撮影期間中にプライベートで亡くなったっていうのはワイスピシリーズを調べたときに知っていていつ退場になるかソワソワしていたけど、でもこれが最後の作品とは思わなかった。だけどビーチでブライアン、ミア、ジャックの微笑ましい光景を見守るファミリーのシーンでまさかとなり、「さよならは?」というセリフでそのまさかが確信に変わった。歌詞がこのために書き起こされたのかと思うくらいドミニクとブライアンの関係性とピッタリなSee you againのメロディとともにワイスピ1からのダイジェストが流れる演出には胸が熱くなる。そして交差点で思いに耽るドミニクに「さよならも言わずに行くのか?」と追ってきたブライアンが声をかける。しばらくの間並走したあと分岐路でお互いが別々の道を行く演出が憎い。
亡くなった人にかける言葉がバイバイ、じゃあね、じゃなくて、また会おうになる海外の死生観ならではのドミニクの「別れなんかない」で心を揺さぶられる。シリーズの枠を超えて、絆を描いたアクション映画としても至高の作品。
しゆ

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